2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K18775
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
星野 隆行 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (00516049)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 電場呈示 / DNA / インターカレーター / 電子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 電場の時空間パターンをコンピューターから自在に制御できるバーチャル電極ディスプレイを用いて, ディスプレイ表面近傍のDNA分子の機能性を操作することに挑戦した.本ディスプレイは,SiN薄膜を電場呈示面とし,薄膜裏面より低加速電子線を走査することで,自在な電場を動的に呈示できるシステムである.標的のLambda DNAにはYOYO-1で標識し,その過渡応答を同軸の蛍光顕微鏡で取得し評価した.YOYO-1分子は,dsDNAの塩基対間に静電相互作用で挿入され,このとき未結合分子より非常に強い蛍光を示す性質があるため,その挿入様式に従い蛍光強度とDNAの機械特性が変化することが予想される.本課題では,DNA分子の分子捕捉能と電場による制御性を確認するために,本ディスプレイを用いて,蛍光強度の変化からDNA/YOYO-1複合体の過渡的な機能変化を観測・評価し,電場呈示やYOYOー1濃度による影響を調査した.電場パターン呈示と共に一時的に蛍光消光するが,その後初期強度よりも強い蛍光強度へ回復することが確認された.このオーバーリカバリーは,電場印加時の電流密度と標識しているYOYO-1の対塩基比率が関係しており,呈示したバーチャル電極が,静電相互作用でDNAに結合する分子の結合状態をスイッチングすることに寄与することを示唆している.加えて,これらの実験を支援するために,バーチャル電極を自在に呈示するためのパターンジェネレータを構築し,インタラクティブにパターン呈示を変えられるシステムを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては,長鎖分子による分子捕捉と外部電場による制御を目的としており,バーチャル電極ディスプレイによる直鎖DNA分子の制御できるかが重要な点であった.今回,DNA分子と静電相互作用で補足される分子の結合様式が,外部電場であるバーチャル電極ディスプレイの呈示電場でスイッチングできることが示されたことから,本ディスプレイで分子機能を制御できることのひとつのエビデンスが得られた.Lambda DNAは比較的長鎖であり,ディスプレイ表面からデバイ長さより遠方に大部分の塩基対が位置していると考えられ,デバイ遮蔽によりバーチャル電極からの制御指令がYOYO-1分子の静電相互作用にはたらかない可能性もあったが,今回の結果から,ディスプレイ面に固定した長鎖分子にはたらく静電相互作用を操作するのに足る機能を有していることが確認できた.また,ディスプレイで呈示するためのパターンジェネレータ―システムを構築し動的パターン制御が可能になった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては,バーチャル電極ディスプレイによる電場の周波数応答解析,捕捉表面の設計・構築,レポーター機構の構築がある.バーチャル電極ディスプレイを動的に呈示すると,界面やSiNの誘電特性から周波数応答が電気的特性に強く表れることが予想されので,分子操作に対する周波数応答を明らかにする必要がある.つぎに,バーチャル電極ディスプレイ表面に固定する分子表面の設計である.分子を捕捉するためのDNA分子とポリマー鎖の機能は鎖長やゼータ電位が寄与することが予想される.これらを設計してディスプレイ表面に安定して固定する方法について検討していく.最後に,応答する分子の構造・機能変化を検出するレポーター機能を実現する必要がある.現在は,蛍光信号の変化をもとに評価しているが,これに加えてプローブ電流変化から構造変化を捉えるVC-SECMなどの電気化学計測を応用することを検討する.
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Causes of Carryover |
本年度は,DNA分子の電場応答解析とパターンジェネレータ開発に優先度をおき研究を実施し,分子捕捉表面の開発は次年度に行うこととした.本年度は過渡応答解析の実験およびパターンジェネレーターのプログラム開発の経費を支出し,分子捕捉表面開発にかかる経費が次年度使用となった.
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Research Products
(4 results)