2022 Fiscal Year Research-status Report
Measurement and modeling of surface reaction of reactive species in surface treatment using atmospheric pressure plasma
Project/Area Number |
22K18789
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 亮 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90323443)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | プラズマ / 活性種 / 表面処理 / ポリマー / 選択的供給 / モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、我々が開発したVUV法を用いてポリマーの表面処理の実験を行った。VUV法は波長172nmの真空紫外光を用いてO2やH2O分子を光解離し、OHやOなどの活性種を選択的に、かつ定量的に表面に照射する手法である。 OH、O、O3を選択的に制御してポリプロピレン(PP)表面に照射したときの、PP表面の水接触角の変化を測定した。水接触角は、活性種表面反応でPP表面に付加された酸素系活性種の量を推定するのに一般に用いられる手法である。その結果、OはOHよりも数倍速く表面に酸素系官能基を付加することが分かり、これら活性種の供給量と水接触角の減少を定量的に測定することに成功した。本研究費で購入したATR-FTIRを用いて表面官能基の測定も行い、-OH基やC=O基がOHやOの供給量ととにも増加および飽和することを示し、過剰な供給下では表面改質に望ましくない低分子酸化物が生成される様子や、その生成に要するOHやOの供給量閾値を測定することに世界で初めて成功した。表面のXPS計測も行い、ATR-FTIRの結果との比較も行っているところである。また、O3は従来から表面改質には効果が無いと考えられてきたが、条件によってはO3が大きく表面改質に貢献することを示すこともできた。 VUV法そのものの開発も継続して行った。従来用いていたO2とH2Oに追加して、CO2分子を光解離してO原子を生成するCO2-VUV法を開発し、従来のO2-VUV法よりも高濃度のO原子を照射することに成功した。CO2-VUV法のシミュレーションの開発および検証も平行して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、ポリマーのプラズマ表面処理ではOHやOが重要と考えられてきたが、それを計測で実証した研究はなかった。これら活性種を選択的かつ定量的に照射する技術が無かったためである。我々はこれらを可能とするVUV法を開発し、OHおよびOをポリマー表面に選択的に照射して、その表面改質反応を定量的に測定することに世界で初めて成功した。OHについては我々の先行研究ですでに結果が出ていたが、Oについては本研究で初めて結果が得られ、現在論文を投稿中である。OHとOの処理効果を定量的に比較したのも本研究が初めてであり、ポリマーのプラズマ表面処理を行う研究者および技術者にとって、本研究成果は重要な知見を与えるものとなる。また、O3に処理効果があること、およびその処理効果がどのような条件で得られるかを本研究で初めて示したことも重要である。O3はプラズマで大量に生成されるため、これまでの表面処理の研究で、このO3の効果を無視していたことが大きな誤差要因となっていた可能性がある。より高精度な表面処理、およびより効率的な表面処理に向けて重要な知見を得ることができた。また、今後行う表面処理反応のモデリングに際しても重要な知見が得られた。 CO2-VUVの開発も大きな成果である。従来のVUV法は供給できる活性種量がプラズマより大幅に少ないことが問題であったが、CO2-VUV法はプラズマと遜色ないO原子を供給することができる画期的な手法となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、O3の表面処理効果に関する実験結果を論文にまとめた後に、ATR-FTIRおよびXPSを用いた表面分析を行い、OやOHの反応がどの官能基の生成に寄与しているかを調べていく。本研究のテーマである活性種表面反応のモデリングに必須の実験である。 同時に、表面反応のモデリングにも着手する。すでに量子化学計算でOHとOがポリプロピレン表面で反応する際の計算を行っており、これらの結果および、今後行う予定である分子動力学計算などの結果をふまえてモデリングを行う。 CO2-VUVの開発も継続して行う。これまではAr/CO2(3%)混合気を用いて実験を行っていたが、CO2=100%ガスを用いて、シミュレーションで予測される1x10(14)cm-3の高濃度O原子が得られることを実証する。CO2-VUV法では、ガスを流す石英管内壁でのO原子の壁反応がO原子密度を決める最も重要な要素である。この壁反応確率をVUV法で実測する手法を本研究で開発したが、その過程で、壁反応確率が3桁も変化する可能性が見出された。この原因および再現性を確認する研究も継続し、派生的な研究成果として、壁反応確率を減らす技術の開発につなげられないかも検討する。 この他オプションとして、VUV法を用いて活性種を細胞や細菌に照射する実験も検討している。
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Remarks |
なし
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