2022 Fiscal Year Research-status Report
光領域差動利得信号生成技術の開拓と半透明サンプルの高速低雑音計測への応用
Project/Area Number |
22K18790
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 洋介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20283343)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩田 達俊 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10376858)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 光計測 / 光信号処理 / ブリルアン増幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
より微弱な信号をより速く、より正確に検出できれば、これまで見落としてきた現象が明らかになり、新たな学問展開につながる。全光領域における差動増幅技術が確立できれば、低パワーの高速信号を高い信号対雑音比で捉えられるようになる。この技術は汎用性が高く、分光計測、形状計測等における高時間分解能化、高感度化につながり、その波及効果は工業分野、生体医用計測分野をはじめとする様々な学問分野におよぶ。本研究課題は以上のような考えのもとで着想した挑戦的な課題である。 2022年度は、当初の着想に従い、光ファイバ中で生じる非線形現象の一つである誘導ブリルアン散乱現象において、単一周波数の入射光によって生成される性質の相反するスペクトルである「利得スペクトル(BGS)」と「損失スペクトル(BLS)」を利用した手法について、実験系の構築と原理確認実験を進めた。具体的には、スペクトル成分が二周波からなる光信号について、それぞれの周波数成分について一方はBGSにより光信号の増幅、他方はBLSにより光信号の減衰を行ったのち、両者を合成した光信号の評価を行った。実験では、光信号をBGSのみで増幅させた場合およびBLSのみで減衰させた場合と提案手法の比較をあわせて行った。更に、光ファイバに温度変化がある場合についての検証を行った。以上の検討の結果、提案手法では、他の2つの場合と比較して雑音が少なく光信号の安定性が増すことが明らかになり、提案手法の妥当性が確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、光ファイバ内の非線形現象を利用した光信号の差動増幅の原理確認として、ブリルアン散乱現象で生じる利得スペクトル(BGS)と損失スペクトル(BLS)を利用した光信号処理を行い、その有効性の検証まで進めることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究成果をもとに、低光パワーの信号を高いS/Nで捉えることで、計測技術に活用することを検討する。まずは、ブリルアン散乱自体が光ファイバの温度や歪みによって変化することを利用して、これらの物理量を短時間かつ低雑音で測定することから始める。
|
Causes of Carryover |
当初、海外での国際会議の参加に計上していた旅費がコロナ禍の影響で使用することがなくなると共に、既存の実験器具を一部有効活用することで実現した実験があったことにより、次年度使用額が生じた。一方、当初検討していた機器や海外、特に米国での国際会議参加費用が、円安の影響により著しく高騰していることから、2023年度は前年度から繰り越した予算とあわせて当初の計画の物品および旅費に予算を充当する計画としている。
|