2023 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and empirical analysis on cry wolf effects in flood prediction: Challenge for the design of flood early warning system
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22K18822
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 洋平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30784475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 仁務 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30814404)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | オオカミ少年効果 / 水害予測 / 水害警報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は水害予測におけるオオカミ少年効果のモデリング、および実証を行うことである。当該年度においては、複数の地域が相互作用しつつ、予警報への社会の信頼が変動していくような社会水文モデルを完成させ、論文化することができ、投稿の後、現在改訂中である。また関連する研究としてこのような社会水文モデルに社会統計データを統合するデータ同化の理論研究や、近年積極的に推し進められている流域治水の政策分析を可能とする社会水文モデルの開発も行い、本研究の補助的な成果とすることができた。 オオカミ少年効果の実証分析においては、警報の空振りが実際の避難行動の鈍化、あるいは水害被害の増加をもたらしているかをデータから因果推論する必要がある。当初計画では携帯電話位置情報のデータを用いて避難行動の変化を検証する予定であったが、個別の水害事例において避難行動を分析しても、過去の警報の空振りの寄与を定量化することは容易でないことが分かった。そこで被災地でのアンケート調査結果や、オープンデータを中心に解析を行うこととした。当該年度においては、2013年台風13号の被災地でのアンケート調査データを基に大雨警報の主観的誤報率と減災行動の関係を分析し、有意な因果関係は認められないことを示した。一方で、2018年西日本豪雨におけるオープンデータを用いた分析では客観的な誤報率と死者数に正の相関がある可能性が高いことを示すことができた。 特定の事例を超えたより網羅的な解析を行うために、過去20年以上にわたって気象庁が発表した警報のデータと水害統計のデータを突き合わせる作業も進めている。次年度はこの解析の結果及び、それとこれまでのモデリング研究の成果との統合により、日本における水害警報のオオカミ少年効果の存在について重要な知見を提供できる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオカミ少年効果に関するモデリング・実証研究双方が順調に進んでいる。個別の避難行動を携帯電話位置情報データから解析するという当初計画は変更を迫られたものの、政府から入手可能なオープンデータを用いた解析に研究資源を集中投下するという戦略が功を奏しつつあり、今後科学的にも政策的にも重要な研究成果が得られることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は3年計画の最終年度であり、特に実証研究に注力しつつも、モデリング研究の知見と合わせて研究成果の取りまとめを行う。日本全国における気象庁発表警報の情報と水害統計を主に水害常襲地とされているところで突き合わせることで、誤報の量と被災の関係について因果推論を行う。研究が順調に進捗すれば、実証研究で得られた知見とこれまで開発してきた社会水文モデルとデータ同化手法を用いて、実証データをモデルに統合した分析を行うことができる予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では携帯電話位置情報データを大量に購入し、解析を行う予定であった。しかし、その後の検討によりこのデータの活用では誤報と被災の関係の因果を見ることは難しいと判断したため、使用計画を変更した。次年度は最終年度であり、研究成果報告などに活用する予定である。
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