2022 Fiscal Year Research-status Report
ケイ酸ゲルによるコンクリート空隙の閉塞メカニズムの解明:補修材が拓く深海への挑戦
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22K18828
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40548575)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ケイ酸 / ゲル / 補修 / 止水 / 含浸 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリート標準示方書の耐久性照査は、点検負担の大きい中性化から、水分浸透に基づいた鉄筋腐食へと転換しつつある。この転換には、照査体系の整備に加え、水分浸透を抑制する補修材の開発が必要不可欠である。ケイ酸塩系表面含浸材(補修材)に関する申請者の研究では、従来の工程を省略したところ、本来期待できない高い水分浸透抵抗性が確認された(特願2020-190615)。この結果からは、コンクリート空隙中においてケイ酸の凝集体(ゲル)が生成され、ゲルの吸水膨潤により空隙が閉塞したことで、水分浸透が抑制されるという仮説を得た。 本課題では、【課題1】空隙におけるケイ酸ゲルの生成メカニズム(仮説)を検証することで、【課題2】コンクリートの空隙に生成させたケイ酸ゲルの膨潤作用によって、鉄筋腐食をもたらす雨水や海水の浸透を止めるという、新しい補修コンセプトを創出する。そして、【課題3】ケイ酸ゲルの持つ水圧緩衝や耐Ca溶脱抵抗性などの特性(深海生物が生成するゲル状アルミニウムも同じ効果を持つ)を生かし、深海構造物への適応性についても探る。 2022年度では、ケイ酸のゲル化メカニズム【課題1】について、ゼータ電位による粒子間の斥力とvan der Waals力による引力の大小関係から、シリカ粒子の凝集と分散性状を示すことで明らかにし、論文としてまとめた(2023年コンクリート工学年次論文)。本メカニズムを基に、ゲルを生成させたいセメント硬化体中の空隙構造の環境を想定した条件についても検討し、新たな補修効果のヒントも見出すことができ、特許申請の準備を進めている。また開発した補修材によるコンクリートの耐久性向上効果の検証【課題2】については、乾燥収縮試験、中性化促進試験、そして塩水浸漬試験を開始しており2023年度に結果が得られる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画通りに進められている。また、22年度の研究結果からは新たな補修効果の可能性を見出すことができ、新たな特許の申請も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度では、開発した補修材によるコンクリートの耐久性向上効果の検証【課題2】について実施している乾燥収縮試験、中性化促進試験、そして塩水浸漬試験の結果を整理する。また、ケイ酸ゲルの持つ水圧緩衝や耐Ca溶脱抵抗性などの特性(深海生物が生成するゲル状アルミニウムも同じ効果を持つ)を生かし、深海構造物への適応性【課題3】についても探る。課題3では、深海における海水の圧力、濃度の条件を設定した載荷試験を実施し、コンクリート組織の物理的・化学的変化について明らかにする。
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