2022 Fiscal Year Research-status Report
美術史学・考古学・建築史学の複合手法による東アジア建築技術伝播ルートの解明
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22K18841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海野 聡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00568157)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 貫 / 東アジア / 両層闌額 / 薬師寺東塔 / 石窟 / 平等院鳳凰堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代東アジアの建築技術伝播では、中国大陸から朝鮮半島経由の北方のルートが想定されており、貫をはじめとする南方系の技術は現存建築の分析から中世の東大寺再建の大仏様の導入以降という固定概念が形成されてきた。一方で、小建築や建築を象った出土遺物・石窟や絵画からも建築情報を抽出することが可能であり、考古学的・美術史的視点により現存建築にはない特徴の抽出が可能である。それゆえ考古学・美術史的手法の導入により、貫の観点から技術伝播のルートを再検討し、古代から中世の東アジアの建築技術伝播史の再構築を目指すものである。 初年度の2022年度は、個々の分析を重ね、韓国の韓国建築歴史学会会議室において、2023年3月5月に国際研究集会「古代東アジアの建築技術 ・情報に関する国際 学術会議」を開催した。その趣旨は下記である。現存最古の木造建築である法隆寺をはじめとする日本の古建築や発掘遺構・出土遺物等から古代東アジアの建築技術の交流が活発であったことが知られている。いっぽうで継承 されなかったとみられてきた技術もあり、日本の代表的な事例のひとつが 両層闌額という頭貫の下に水平材であったが、近年、薬師寺東塔の 解体修理によって、その存在が確認された。これをもとに 12 世以前の貫に関する再検討が進 み、新たな視座が提示されている。東アジアの建築技術の観点から捉えると、貫は中世以降の禅宗様や大仏様の展開との関連で着目されることが多いが、古代においても建築技術の伝播をうかがう重要な指標である。 そこで日中韓の貫状の材を中心に、12 世紀以前の建築技術の交流と伝播について、東アジアの視点から検討した。中国・韓国の研究者らとともに、貫状の部材に関する東アジア各国の状況の違いの一端が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のの2022年度に国際研究集会「古代東アジアの建築技術 ・情報に関する国際 学術会議」を開催できたことは大変大きなステップである。とくに日本における研究だけではなく、中国や韓国において、同様の問題意識を持ちえたこと、そして各国の研究者がそれぞれ同じ視点で研究を深めるきっかけとなった点は大きな成果である。 また広島県内の中世仏堂の調査をおこない、禅宗様や大仏様の要素のある仏堂とその意匠・構法的な情報収集と分析をおこなった。調査にあたっては、研究補助のために大学院生の協力を得た。 いっぽうで、中国の現地調査が重要な位置を占めるが、中国への渡航に対するハードルは依然として高く、継続的な課題である。これを補うべく、中国国内の研究協力者に依頼することで、文献史料を中心に、その情報収集に努め、国際研究集会で報告を得られた点は大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降、修理工事報告書等の資料収集に関しては研究室の大学院生を中心に、謝金にて作業依頼する。継続して、文献調査・現地調査(日本・中国)をおこなうが、国内については古代・中世の日本の建築を中心に、現地調査を行う。調査の事前準備として、修理工事報告書など、刊行物による情報収集も依頼する。 またコロナや中国渡航の環境が改善し次第、調査対象の寺院の都合や調査受け入れの可否に応じて、弾力的かつ柔軟に対応する。中国国内の現存建築の調査には中国国内の研究者の協力が不可欠である。中国の入国状況が改善したのち、中国国内の大学らや文化財関係者らの協力を得て、現地での調査を予定したい。また中国の石窟寺院・出土部材に関しては、中国人研究者らの協力をもとに、石窟寺院・出土小建築の調査をおこないたい。 年度の後半において、日・中・韓の三国による国際研究集会をおこない、研究に対する問題意識の共有および、大仏様と中国南方範囲の建築技術の比較に関する研究の深化をすすめたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は緩和されたとはいえ、コロナによる海外渡航制限や調査困難の状況にあり、予定していた執行額よりも低い金額となっている。あわせて、2022年度には他の予算を得ることができたため、こちらとの相乗効果を期待し、次年度以降の海外・国内調査の充実を図る。また修理工事報告書を中心とする図面・資料調査を謝金作業によって進めていく。
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Research Products
(9 results)