2023 Fiscal Year Research-status Report
アミンへの分子認識試薬を利用したCO2の固体化とアミン吸収液の非加熱再生
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22K18926
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大島 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (00343335)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | amine / extraction / CCUS / carbon dioxide / separation / ion exchange / calixarene / pillararene |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,カルシウムイオン(Ca(II))に対して有機アンモニウムを選択的に認識できるホスト分子を利用し,アミン吸収液の再生と炭酸塩精製を同時に達成する新規なCO2吸収および再生プロセスを開発する。 2023年度はホスト分子であるカリックス[6]アレーン酢酸誘導体(H6R)によるアミンの選定とCa(II)との交換反応による抽出試験を行った。吸光光度計で分析しやすくかつ親水性/疎水性バランスが適切な化合物としてフェニルエチルアミンが有効であることを見出し、Ca(II)よりも抽出されやすいことを明らかにした。比較したアミンは抽出率が低くてCa(II)とほぼ同じpH領域で抽出されるものや、疎水性が高くて自己分配してしまうものが多く、Ca(II)との交換に適した化合物として現時点ではフェニルエチルアミンが望ましい。1価のアミンが2価のCa(II)より選択的に抽出されるのはホスト分子のアミンへの分子認識特性が反映されていると考えられ、本ホストの優位性が示唆された成果と思われる。この組み合わせにより、H6RにあらかじめCa(II)を抽出させ、カチオン交換反応によってアミンを有機相に抽出除去し、Ca(II)を逆抽出で水相に供給できることが示された。次年度はこれにより水相で炭酸カルシウム沈殿を生成しうるかを検証する。 他方、昨年度にアミン認識ホストとして見出したピラー[6]アレーン酢酸誘導体について質量分析により目的分子が得られていることを確認した。さらに、この物質を抽出剤としてカチオン性タンパク質であるシトクロムcを有機相に抽出できることを見出した。これはピラーアレーン誘導体を用いてアミノ酸類およびタンパク質を抽出した初めての成果と思われる。この抽出はホスト分子によるアミノ基(リジン残基)の認識に基づくと予想され、分子認識に基づくタンパク質の抽出分離系が構築しうると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目論見どおり、アミン認識ホストを用いてCa(II)に対するアミンの選択的な抽出が可能であり、そのカチオン交換反応が行えることを2023年度までに明らかにしたことから、研究は順調に進捗していると判断できる。他方、アミン認識ホストとして新規開発したピラー[6]アレーン酢酸誘導体が各種のアミノ酸類やカチオン性タンパク質を抽出できる点も学術的新規性が高いと判断でき、研究期間内に学術雑誌に論文投稿する計画である。 本提案の実用化に向けた課題として2点挙げられる。第一に、アミンとの交換反応によって水相に逆抽出されたCa(II)が炭酸カルシウムとして沈殿することを示す必要がある。溶解度積を踏まえてpH・濃度条件を最適する必要がある。さらにホスト分子を溶解する有機溶媒の選定は処理量・安全性の点から重要であり、その最適化が望まれる。これらについて最終年度に検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
H6Rによるアミンの抽出については、Ca(II)との交換反応の条件検討によって炭酸カルシウムの沈殿生成のための条件探索を行う。この際、溶解度積に基づいて水相中のCa(II)濃度、および炭酸イオン濃度をより高くすることが望まれる。その実現にはあらかじめ有機相に抽出しているCa(II)濃度を最大限に高める必要があることから、ホスト分子によるCa(II)の抽出容量の最大化を目指す。他方、交換反応できるアミンのさらなる選定、選択性の向上を目指す。そのためには抽出選択性とホストの高い溶解度を両立する溶媒の選定が重要であり、その選定を並行して検討する。 他方、ピラー[6]アレーン酢酸誘導体によるタンパク質の抽出についてその応用を検討する。タンパク質間の抽出選択性、特に分子量や等電点などの基本物性の類似したタンパク質間の抽出分離が可能かを検討する。さらにアミンの認識に基づいてタンパク質が抽出されているかを検証するため、タンパク質を化学修飾してアミノ基を保護することによる、抽出への影響を検証する。アミノ酸類の抽出についても引き続き抽出反応の導出を検討する。 最終年度であり、これらの研究成果の学術論文ならびに学会発表による成果発表に努める。
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