2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K18961
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山ノ内 路彦 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (40590899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植村 哲也 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (20344476)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | トンネル磁気抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性ワイル半金属を強磁性電極とする磁気トンネル接合(MTJ)においては104%を超える巨大なトンネル磁気抵抗(TMR)比を実現できることが理論的に予想されている。昨年度、磁性ワイル半金属と考えられているCo基ホイスラー合金Co2MnGa (CMG)を強磁性電極とする保磁力差型MTJを作製し、室温で70%程度のTMR比を示すことを明らかにした。しかし、反平行磁化配置が不安定であり、TMR比が減少している可能性があった。そこで、CMGを強磁性電極とするMTJにおいて、強磁性電極の磁化配置の影響を除いたTMR効果を明らかにするため、CMGを強磁性電極とし、かつ交換バイアスにより反平行磁化配置を安定化させた交換バイアス型MTJを作製し、そのTMR効果を調べた。 MgO基板上にスパッタリングと電子線蒸着を用いて、CMGを強磁性電極とする交換バイアス型MTJの積層構造を成膜した。続いて、作製した積層構造をフォトリソグラフィーとArイオンミリングを用いて接合面積がミクロンサイズのピラー形状素子に加工した後、上部CMG層に交換バイアスを作用させるため、真空中にて面内磁場印加のもとで熱処理した。そして、交換バイアスに沿う方向の面内磁場を掃引して素子抵抗の面内磁場依存性を測定した。作製したMTJ素子は典型的な交換バイアス型MTJにおける抵抗の磁場依存性を示し、TMR比は室温で97%であった。このTMR比は保磁力差型MTJにおけるTMR比よりも高いが、理論値よりも低い。この原因として、今回作製した交換バイアス型MTJでは、CMGの組成ずれ、CMGからMgO障壁へのMn拡散や、及びCMG膜厚が薄いことなどによって理想的な磁性ワイル半金属MTJとは異なっていることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究により、Co2MnGa (CMG)を強磁性電極とする磁気トンネル接合(MTJ)において、強磁性電極の磁化配置の影響を除いたトンネル磁気抵抗(TMR)効果が明らかになった。交換バイアス型MTJにおいても、理論的に予想されているような巨大なTMRが観測されなかったことから、TMR比を低下させている主要因は、強磁性電極の磁気的な特性ではなく、CMGの組成ずれ、熱処理によるMgO障壁層中へのMnの拡散、CMG膜厚が薄いことなどに関係していることが示唆された。今年度にCMGを強磁性電極とするMTJにおいて、TMR効果への磁気特性とそれ以外の寄与の分離を予定していたため、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Co2MnGa (CMG)の組成ずれを補正した交換バイアス型磁気トンネル接合(MTJ)、及びCMG膜厚を変化させた交換バイアス型MTJを作製し、それらにおけるTMR効果を調べる。CMG組成、及びCMG膜厚とTMR効果に関係がないようであれば、熱処理によるMgO障壁層中へのMnの拡散を抑制するため、熱処理条件を最適化したMTJにおいて、TMR効果を調べる。ワイル電子のヘリシティを利用したTMR効果では、TMR比の磁化角度依存性が従来機構のTMR効果と異なるため、上記の検討で最適と考えられるMTJにおいてTMR効果の角度依存性を調べることにより、ワイル電子のヘリシティとTMR効果の関係を明らかにする。
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