2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of two-photon photoelectron yield spectroscopy towards determination of electron affinity of functional materials in air.
Project/Area Number |
22K18977
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
細貝 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90613513)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 電子親和力 / 機能性材料 / 光電子収量分光法 / 二光子吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子や分子にとって基本的な物理量でありながらも実験的な決定が容易でない電子親和力(EA:Electron affinity)の大気下での非破壊決定手法の構築を目指している。このための実験装置に必要な器具として、ポンプ・プローブ用光源(スーパーコンティニュー光源)と光学部品(ミラーやレンズ、バンドパスフィルター等およびそれらのホルダー)、光学定盤、光学遅延ステージ、小型回折格子、フェムトアンメーター等の購入を行い、専用の試料ホルダーの設計も行うことで、光電子放出に伴う電荷補償型の電流計測システムの組み上げを進めた。試料ホルダーの治具の製作は3Dプリンターを用いて自作した。またスーパーコンティニューム光の紫外から可視域の光と近赤外の光のビーム分割はシグマ光機社のコールドミラーが安価かつ光学特性上で最適なことを突き止めて、その購入と装置への設置を行った(なおこの時のコールドミラーの検証において行った研究の成果をQ1論文であるNanomaterialsにて発表した)。計測プログラムの作成も行った。分光器を通した近赤外領域の光は、その強度が不十分であることが危惧されたとともに透過波長に依存して試料上での位置ずれも起こることが分かった。この位置ずれはポンプー・プローブによる光電子放出量の正確な測定を阻害する。このため波長選別には反射型の分光器ではなく、透過型のリニアバリアブルフィルターを購入することで光の位置ずれ問題の解消を狙った。また光学システムは二つの可視光励起でポンプ・プローブ光に切り替えられるシステムの構築も進めて、様々なEA値を持つ材料への適当を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はパルスレーザー光の照射による二光子-光電子放出のために必要な器具の選定から購入、光学システムの構築をするとともに、各種の計測プログラムの開発や光源となるスーパーコンティニュー光源を用いたポンプ・プローブシステムに必要な課題の洗い出しに伴うシステムの修正など、全ての作業をゼロから行う必要がある。初年度は新型コロナの流行の影響による物流の停滞によって、システム構築に必要な基本的な物品の購入がメインの作業となり、年度後半から光学システムの構築を始められた。今年度はこの構築を進めて、本課題の目標である大気下での二光子光電子放出を実証することを目標とした。年度の前半には計測プログラムの作成を進めてこれをほぼ終えたが、肝心のポンプ・プローブをするために用いた波長選別のための反射型の回折格子では、波長を変えると試料上の光の位置ずれを起こすという課題が判明した。このために回折格子の種類を透過型に変更する必要がでたため、その購入が余儀なくされた。これにより当初の予定より装置開発の遅延が生じている。ただし、この遅延の期間において、新たに当初の想定である近赤外光と可視光のポンププローブだけでなく、可視域のビームスプリッターを新たに導入することで二つの可視光のポンプ・プローブシステムへ切り替えられる光学システムの構築も進めた。結果的には当初想定していた範囲以上の物性を持つ材料の適用幅を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】で述べた通り、当初に想定しなかったパルスレーザー光の波長選別による位置ずれ問題が課題として浮かび上がったため、これを解決するために透過型の回折格子の導入を進めた。現在までに二光子光電子放出を検証するためのシステムが組み上っているため、最終年度となる2024年度は目標であるEAの決定を目指す。スーパーコンティニュー光源はトータルのエネルギーが4ワットと大きいが、分光することで各波長でナノジュール程度まで減少する。万が一、このパルスエネルギーが足りない場合は、所有する高強度ピコ秒Nd:YAGパルスーレーザーを用いた光学システムの構築も想定している。業者とは打ち合わせを行っており、スーパーコンティニュー光源を用いたシステムと並行して、もう一つのポンプ・プローブシステムの構築も行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は研究計画の遅れによって、成果発表に使用する予定だった予算に未使用が発生した。2024年度は論文化においてオープンアクセス費用として繰り越し金額を使用する。これとともに、当初想定していなかったリニアバリアフィルターの導入に伴う光学部品の追加購入も想定している。また、スーパーコンティニュー光源のパルスエネルギーでは不十分な物性を持つ試料群の測定をカバーするための、当研究者が所有する高強度ピコ秒レーザーでのポンプ・プローブ光源の製作に必要とする、ビームスプリッターや高精度ステージ等の光学機器の購入にも当該繰り越し予算を使用する予定である。
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