2022 Fiscal Year Research-status Report
バレースピン制御とデバイス応用:バレートロニクスに向けた課題と挑戦
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22K18986
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 原子層半導体 / バレートロニクス / バレースピン分極 / 励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、バレートロニクスに向けて打破が必要な技術的な困難を克服する方策として、異なる単層MX2(M=Mo, W, X=S, Se)をファンデルワールス力で積層したヘテロ構造(MoSe2/WSe2, WS2/WSe2)での特異なバレースピン分極状態を利用する事を着想し研究を進めた。これまでの研究から、バレースピン励起子(電子-ホール対)の電子-ホール(クーロン)交換相互作用が、分極緩和を引き起こす事がわかっており、その知見を利活用する。特に、電子とホールが空間的に分離し弱束縛した、ヘテロ構造(MoSe2/WSe2)での層間バレースピン励起子(荷電励起子)がこのような目的には最適ではないかと考えた。具体的な実験項目と成果は以下の通りである。 1)乾式転写法を用いた高品質ヘテロ構造(MoSe2/WSe2など)をベースに、新たにフォトリソグラフィなどを併用し、グラフェン電極を施した電界効果トランジスタデバイスを作製できた。これにより、ゲート電圧によるキャリア濃度変調で、層間バレースピン励起子と荷電励起子の両方を観測できた。 2)このデバイスにおいて、円偏光励起によるバレースピン分極の選択生成と光検出を、簡便にかつ高精度に行うための実験セットアップを新たに構築した。これを用いて、ヘテロ構造(MoSe2/WSe2など)での円偏光分解の発光測定を行い、バレースピン分極に起因する円偏光発光を観測することに成功した。また、計画に先行してバレースピン分極のダイナミクスの実験を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の初年度となる本年度は、バレートロニクスに向けて重要なバレースピン分極の観測に必要となるデバイス構造を施した二次元半導体ヘテロ構造の作製に成功し、層間励起子(荷電励起子)からのバレースピン分極に起因する円偏光の観測に成功した。これらは研究計画当初の研究項目をクリアするものである。これに加えて、先行してバレースピン分極のダイナミクスなどに関する知見が得られつつあるため、上記の判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降、層間荷電励起子などのバレースピン分極のダイナミクスに関する情報を得るため、先行して進めている円偏光分解時間分解測定の研究を更に推し進め、その物理の理解を行う。加えて、ヘテロ構造(MoSe2/WSe2)の層間にバリア層を挟み、電子-ホール(クーロン)交換相互作用を制御した系においても研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、時間分解測定の光学系が、既存の物品をベースにセットアップする事が可能である事が判明したため、次年度以降の実験セットアップ構築・シミュレーション用の計算機等に充填し研究を拡充すること検討している。
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