2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K18989
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
太田 泰友 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90624528)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員 (70205475)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 磁気光学 / イプシロンニアゼロ光学 / トポロジカルフォトニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イプシロンニアゼロ(ENZ)特性を示す酸化インジウムスズ(ITO)を舞台に、磁気光学(MO)効果の非線形光学応答の観測とその応用を検討するものである。初年度は、ガラス基板上への高品質ITOの成膜を試みるとともに、作製したITO薄膜に対する光学評価を行った。また、MO-ENZ材料を取り込んだ光学素子の設計にも取り組んだ。ITOの成膜では、スパッタターゲットの工夫やスパッタ条件の精密制御を通じて高品質化を図った。作製した薄膜はエリプソメーター等で評価し、その誘電率などを解析した。まず、ITO中の酸素濃度を変化させることでENZ波長の制御を試みた。結果、目標とする近赤外領域においてENZ特性を示すITO薄膜の形成に成功した。特に、高温での成膜条件を見出すことで、先行研究と比べてENZ波長における光学損失が小さなITO膜を形成することが可能となった。次に、同薄膜に対するMO分光を進めた。可視から近赤外域において、透過反射分光を行いガラス基板の影響を差し引くことでITO薄膜のMO応答を調べた。結果、近赤外域においてFaraday回転およびKerr回転ピークをENZ波長近傍で観測することに成功した。酸素濃度を変化させた試料においては、MO応答のピーク波長がシフトを示し、ENZ効果によって増強されていることが確認された。光学デバイスの設計では、ENZ材料をクラッドとしたフォトニック結晶構造の解析に取り組んだ。有限要素法をベースとしてヘルムホルツ方程式を解析しバンド構造などの基礎的な光学応答を調べた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に用いる高品質ENZ-ITO薄膜の成膜に成功し、光学設計も順調に進んでいる一方で、超短パルスレーザーが故障し非線形分光の実験を中断せざるを得なかった。これらの状況を鑑みて、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は製膜したENZ-ITO薄膜に対する解析を進めその一層の高品質化に取り組むとともに、故障した超短パルスレーザーの修理ができしだい非線形分光実験に取り組みたいと考えている。並行して光学設計を進め、新奇MO素子に関する検討を行う。
|
Causes of Carryover |
非線形分光に用いる超短パルスレーザーが故障し、実験に用いることができなくなったため、光学系の構築を中断し試料作製に注力せざるを得なくなった。修理を依頼した業者との交渉が難航し未だに修理が完了していないが、修理ができ次第今年度進めることのできなかった光学系の構築を進める。
|