2022 Fiscal Year Research-status Report
高不整合材料の電子物性制御によるフルスペクトル光触媒の開発
Project/Area Number |
22K19000
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
田中 徹 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20325591)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 高不整合材料 / 人工光合成 / マルチバンドギャップ半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
無尽蔵な太陽光と水を利用して貯蔵可能な水素を生成する人工光合成は,次世代エネルギー創製技術として期待されている。しかしながら,頻繁に使用されている酸化物半導体の多くはバンドギャップが大きいことから,太陽光に5%程度しか含まれない紫外線によってのみ水素生成が可能となっているため,変換効率が低いことが問題である。効率向上のためには,より長波長光の吸収により反応を効率良く起こすことができる材料開発が重要な課題の一つである。 本研究では,従来の半導体混晶と異なるユニークなバンドエンジニアリングによりマルチバンドギャップを生成可能な高不整合半導体材料に着目し,その電子物性制御により中間バンドを介した二段階光吸収を効率よく実現することで,赤外から可視,紫外までの光を吸収可能とするこれまでにない新しいフルスペクトル光触媒を開拓することを目的としている。初年度である2022年度は以下の研究を実施した。 (1) 分子線エピタキシー法によりp-ZnTe基板上に高不整合材料であるZnTeOを成長し,n-ZnSと組み合わせた光電極構造の作製を行った。ZnTeOに対して,ドナーとして作用しうるClをドーピングし,その濃度を変化させると共に,ZnTeO層とn-ZnS層の間に,中間バンドからの電子流出を抑制する目的でブロック層としてアンドープZnTeを挿入し,その有無による特性の違いを評価した。作製した光電極の光電気化学特性の測定結果から,ブロック層の挿入により中間バンドからの電子の流出が抑えられ,二段階光吸収が生じやすい状態となることが明らかとなった。 (2) n型窓層として候補の一つであるZnNiO薄膜を作製し,組成と結晶性,光学特性など諸特性との関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各項目ともに研究計画に沿っておおむね順調に研究を進めてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に得られた結果をもとに,以下のように研究を進める。 (1) ZnTeO光電極における二段階光吸収電流の評価を行い,ブロック層および中間バンド層の膜厚等を変化することで,より大きな二段階光吸収電流が得られる構造を検討する。 (2) (1)で作製した試料を用いて,水素発生に関する実験を行い,定量的評価を行う。 (3) n型窓層としてZnNiO薄膜の作製条件の検討とn型ドーピング実験を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により一部学会がオンラインハイブリッド開催となったことにより,参加費や旅費に余剰が生じた。また,学内予算の一部を本補助事業で使用する消耗品・原材料の購入に充当できたことから,物品費に余剰が生じた。余剰分は,2023年度の本研究を一層推進するために使用する予定であり,実験に必要な原材料費,基板費用,学会等への参加費等に用いる。
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