2023 Fiscal Year Research-status Report
Single molecule fluorescence measurement in the nanosecond time scale using the accelerated fluorescence emission rate exhibited by microdroplets
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22K19011
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
迫田 憲治 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80346767)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 微小液滴 / 光共振器 / Purcell効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究で開発した断熱チャンバーを用いて,空間捕捉した微小液滴に溶存した色素分子の蛍光寿命を測定するための検出系の構築を行った.対物レンズを用いて捕集した蛍光を光電子増倍管で検出し,時間相関単一光子計数法を用いて蛍光減衰曲線を得た.ローダミンBが溶存したグリセリン微小液滴を断熱チャンバー内に設置したイオントラップで空間捕捉し,チャンバー内温度を21.0, 5.0, -1.5, -5.0, -8.0, -10.0 ℃に設定して蛍光寿命の測定を行った.その結果,蛍光寿命はチャンバー内温度が低くなるにつれて遅くなり,チャンバー内温度が-1.5℃以下になるとほぼ一定の値になることが分かった.また,蛍光寿命測定と同時に計測した蛍光スペクトルを解析することによって,寿命測定の間に液滴径がどの程度変化したかを追跡できるように装置を改良した.その結果,チャンバー内温度が-1.0℃よりも低くなると溶媒の蒸発が抑制され,液滴径がほぼ一定に保てることが分かった. 一方,我々が以前に行った実験から,室温で蛍光寿命測定を行っても,顕著なPurcell効果が観測できないことが明らかになっていた.そこで,チャンバー内を冷却して蛍光寿命を測定した結果を解析したところ,低温においても顕著なPurcell効果は観測できなかった.そこで,ローダミンBを表面に吸着させたポリスチレンビーズ(直径は3, 4, 6マイクロメートル)を用いて蛍光寿命の測定を行ったところ,直径3マイクロメートルのポリスチレンビーズの場合,顕著なPurcell効果を観測することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に開発した断熱チャンバーを用いて,液滴周囲の温度を変化させながら蛍光寿命の測定し,同時に蛍光スペクトルも取得する装置を開発できたため,技術開発面では順調に研究が進んだ.一方,実際に蛍光寿命を測定してみると,過去に報告されているようなPurcell効果は観測できず,温度を変化させても同様の結果であった.一方で,色素を吸着させたポリスチレンビーズではPurcell効果が明瞭に観測されている.このことは,液滴においてPurcell効果が観測されない理由が,我々が開発した装置に固有の問題ではないことを強く示唆している.いまのことろ,液滴でPurcell効果が観測されない理由についてはよくわかっておらず,更なる研究が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,顕著なPurcell効果を示したポリスチレンビーズを用いて研究を進める.色素標識したタンパク質をポリスチレンビーズに吸着させ,これを空間捕捉することによって,色素からの蛍光寿命を測定する.2023年度の研究から,この条件においては色素標識タンパク質がPurcell効果を示すことが期待できる.一方,同じ色素標識タンパク質を液滴に溶存させて蛍光寿命を測定する実験も同時に行う.この条件ではPurcell効果が観測できない可能性がある.過去に液滴のPurcell効果を報告している論文では,励起光と蛍光捕集方向が直交しており,我々の装置とは異なる(我々の装置は180°方向).装置を改良することによって,90°方向の蛍光を検出できるようにし,蛍光寿命の測定を試みる.
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Causes of Carryover |
当初の予想に反し,液滴周囲の温度を制御しても蛍光寿命に対するPurcell効果を観測することはできなかった.この問題に取り組むために時間を要したため,色素標識したタンパク質を溶存した液滴の実験を行うことができなかった.2024年度は,色素標識タンパク質を用いた実験を行うため,標識色素やタンパク質,実験に必要な溶媒などの試料類,成果を発表するための学会参加,論文投稿費用に研究費を使用する予定である.
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