2023 Fiscal Year Research-status Report
Chemistry of Lewis Acidic Diborylcarbene
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22K19021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠本 周平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (60737831)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | カルベン |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ素二置換カルベンの発生、観測をおこない、さらにその高いルイス酸性を活かした反応性の探索も行った。 ホウ素原子が2つ置換した2配位中性炭素種ジボリルカルベンの前駆体として、フッ素および塩素が置換したカルベン等価体、カルベノイドの単離に成功した。さらにルイス酸によるハロゲン化物イオンの引き抜きにより、ジボリルカルベンの発生を核磁気共鳴分光分析により確認し、さらにホスフィンによる捕捉と強いルイス酸性の確認をおこなった。本成果について論文報告をおこなった。 この成果は、これまで主にルイス塩基として利用されてきたカルベンが強いシグマ-ルイス酸として働くことを示した成果であり、今後の反応剤、金属錯体における配位子としての利用が期待される。
さらに、ジボリルカルベンとカルコゲン単体との反応をおこない、ジボリルカルボニル化合物を経由する種々の反応をみいだした。これまで有機化学ではおもに酸素や窒素といったπ供与性のヘテロ原子が置換したカルボニル化合物が多く用いられてきたが、ホウ素を置換することによる特異な反応性により、新奇合成化学反応開発に貢献する成果である。 また、当初想定していなかった成果として、ジボリルカルベンとカルコゲン元素との反応において、ジボリルカルベン二量体である『テトラボリルエチレン』の生成を確認した。得られたテトラボリルエチレンはホウ素の空のp軌道が全てエチレンと共役しており、これまでに得られたことのない電子構造を有している。本化合物は電子不足オレフィンとして、電子受容体としての材料利用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としたジボリルカルベンの発生、観測を既に達成している。 さらに、カルコゲン単体との反応により、特異な反応性の開発と典型元素錯体としてのルイス酸性ジボリルカルベンの性質を明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにルイス酸性ジボリルカルベンの性質を明らかにするべく、23年度に達成した典型元素錯体の合成単離に加え、遷移金属元素錯体の合成にも着手する。 また同時に究極の目標である『遊離ジボリルカルベンの単離』に向けた検討もおこなう。
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Causes of Carryover |
研究の発展により、遷移金属錯体合成も検討することにしたため、高価な遷移金属前駆体を試薬として24年度初めに購入することとした。そのため、23年度の消耗品費を24年度に繰り越すこととした。 24年度予算と合わせて、主にジボリルカルベン前駆体合成のための有機試薬と遷移金属前駆体の購入に利用する。
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