2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22K19031
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳶巣 守 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (60403143)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | N-ヘテロ環カルベン / 炭素原子 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気的に中性な炭素種の中で最も電子数の少ない「原子状炭素」の等価体として機能する分子を開発するために、本研究ではN-ヘテロ環状カルベン(NHC)という取り扱い容易な有機化合物が、炭素原子等価体として利用可能であることを実証する。原子状炭素は原理的に4つの置換基を新たに導入することが可能なため、短工程での複雑分子構築のための理想的な手法となる。本研究では、原子状炭素等価体として機能するNHCおよびその類縁体を開発し、4つの共有結合を一段階で形成する新しい有機合成反応(「炭素原子埋め込み反応」)の開発を目指した。 昨年度までの検討の結果、α,β-不飽和アミドとNHCとを反応させたところγ-ラクタムが生成することを発見し、Science誌へ報告した。今年度はその結果を基盤として下記の結果を得た。 (1)基質の適用範囲の拡大:これまでは窒素上にアリール基を持つ不飽和アミドに適用範囲が限定されていたが、種々検討の結果、α位とβ位にともに置換基を持つ不飽和アミドでも炭素原子埋め込み反応が進行することを明らかにした。これは、より入手容易なNHアミドを原料として利用できるということを示しており、様々な多置換γーラクタムの合成へと展開可能であることを明らかにした。 (2)反応機構の解明:反応の鍵中間体として想定しているスピロ中間体の加水分解体の単離・構造決定に成功した。さらにDFT計算によりスピロ中間体の生成と続くプロトン移動、アミナールの開裂を経て進行することを明らかにした。
|