2022 Fiscal Year Research-status Report
新発想水素可視化・検出技術の開発:水素社会における安全のために
Project/Area Number |
22K19046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 健一 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80293843)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | イリジウム錯体 / 水素 / 検出法 / 可視化 / 安全技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素エネルギーを社会に定着させるためには、水素に関わる安全技術の確立が欠かせない。安全技術のひとつとして、「水素を簡便に可視化する技術開発」が挙げられる。すなわち、無色・無臭の水素を「見える化」して安全を担保することは、水素エネルギー利用の受け入れやすさにつながり、広い意味での社会的貢献となるといえる。 ところで、現状の大きな問題として、水素を簡便に可視化する技術が欠落していることを忘れてはならない。現在の一般的な水素可視化法は、1)水素マイクロプリント法、2)銀デコレーション法、3)二次イオン質量分析法、4)ケルビン法をはじめ、さまざまな手法が存在するが、いずれも特殊な装置を用いるものであり、実使用環境となる現場にて、肉眼やデジタルカメラ等のみによって、水素の可視化を成し遂げる手法はない。この点は、水素自動車や水素ステーションの普及が思うように進まず、水素社会への移行が加速されない要因のひとつではないかとみられる。 本研究では、本研究者が開発してきたイリジウム錯体が、固体状態においてさえも水素ガスと迅速に反応し、黄色から橙色へと色相が大きく変化することを応用し、簡便に利用しやすい水素可視化法として発展させることを目的として遂行している。 本年度は、ポリスチレンをはじめとする高分子材料中にイリジウム錯体を分散させ、透明なフィルムを得ることに取り組み、その作製に成功した。続いて、錯体したフィルムを水素雰囲気下に曝し、フィルムの色が黄色から橙色に変化することを確かめた。このように、従来は錯体の粉末によって水素の検出を行っていた手順をもとに、可視化法としてさらに実施しやすい、フィルムを使う手法へと発展させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の当初の研究実施計画は、イリジウム錯体が高分子材料中に均一に分散したフィルム状の膜を合成すること、ならびに得られたフィルム膜に水素を作用させた際の変化を観測することであった。これらの項目について、当初の計画にしたがって研究を進め、期待した成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究のなかで合成に成功した水素検出用フィルム膜について、1)水素可視化における再利用可能性の検討、2)分光学的分析に基づいたフィルム中でのイリジウム錯体の構造変化の解明、3)水素可視化における分解能の観点からの調査、などは今後の課題である。これらについては、来年度以降に研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行の遂行のために利用するイリジウム塩について、研究室にて保有していたものを有効活用したため、本年度の試薬購入費を大幅に抑えることができた。 次年度以降は、水素検出用フィルム膜を大量に合成する計画であり、そのためにイリジウム塩を購入する。次年度使用額は、その一部に充てる。 このほか、技術補佐員を雇用して、本研究課題を迅速に進めるためにも次年度使用額の一部を充てる。
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