2022 Fiscal Year Research-status Report
Creation and functionalization of bio-composite systems using metal-organic polyhedra and enzymes
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22K19052
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大場 正昭 九州大学, 理学研究院, 教授 (00284480)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 金属有機多面体 / 多孔性金属錯体 / 酵素 / 生体複合システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イオン性金属有機多面体 (MOP) 分子を「中空スペーサー」として酵素と複合化することで、多孔性配位高分子などの多孔質固体を用いた従来の酵素複合体の抱える合成条件やサイズ制限などの問題を解決する。イオン性 MOP 分子の空間、化学的性質、イオン性相互作用を利用して酵素を安定化し、MOP-酵素複合体を基盤とする高機能な生体複合システムの創製を目指して、次の研究項目(1)-(3)を推進した。(1) MOP と酵素の複合化法の確立、(2)複合体の機能評価、(3) 複合体の構造評価。 (1)では、酵素が変性しない水系での温和な条件下の合成を可能にするために、水溶性の MOPの開発を進めた。配位子にスルホニル基またはアミノ基を導入する事で、アニオン性とカチオン性の水溶性Rh(II)MOPの合成に成功した。チトクロームC (CytC) を等電点とは異なるpHでイオン化し、水溶性MOPアニオンを加えることで、MOP-CytC 複合体を合成し、濃度や水溶性MOPの割合を変えて複合化条件を最適化した。BSAと水溶性MOPカチオンを用いた場合も、同様に手法で複合化に成功した。また、対照実験としてPOMなどのイオン性分子とMOPの複合化も検討した。以上より、温和かつ簡便な手法によるMOPと酵素の複合体の合成法を確立できた。 (2)では、MOP-CytCの触媒能をABTSアッセイにより評価した結果、複合体がCytC単独の場合の44倍もの触媒能を示す事を見出した。また、この複合体は回収および再利用可能であり、回収した複合体は90%以上の触媒能を維持していた。 (3)では、SEM-EDXによる元素分布および各種スペクトルの測定から、複合体の形成を確認した。また、ガス吸着測定により、MOPスペーサーによる細孔構造の形成が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規イオン性MOPを開発することで、想定以上に温和かつ簡便な手法でMOP-酵素複合体を合成できた。複合体はコロイド状であるが、合成条件の最適化により再現性よく合成でき、かつ再利用が可能であることも実証できた。また、機能面でもチトクロームcの酵素活性を44倍に向上させるなど、予想以上の高機能化に成功した。これらの結果をまとめて論文を投稿し、現在改訂を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も上記(1)-(3)を推進する。 (1)では、現状では利用できるMOPが2種類しかないので、新たに構造の異なる水溶性MOPの開発を進める。また、配位子の官能基に炭素鎖を導入して、MOPのサイズと水溶性を制御する。その上で用いる酵素の種類を増やして、本複合化手法の「酵素の固定化手法」としての一般化を進める。 (2)では、引き続き複合体の水系での安定性と触媒能の評価を進める。有望な系について、複合体のサイズ制御および膜化を進める。 (3)では、主に電子顕微鏡を用いた観察、トモグラフィーと元素分布解析から、MOP の分布および MOP-酵素界面の状態を評価する。結晶性が確認された系では、単結晶化も検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた日本化学会春季年会への参加を見送ったため、旅費の支出が減り、次年度使用額 94,895円 が生じた。この金額は次年度の成果発表のための旅費に充当する予定である。、
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Research Products
(9 results)