2022 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を前駆体とした錯体ネットワークの合成とプロトン伝導体への展開
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22K19064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀毛 悟史 京都大学, 高等研究院, 准教授 (70552652)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | プロトン伝導 / 配位高分子 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではイオン液体と金属イオンの組み合わせからなる錯体ネットワークを用いたプロトン伝導体を合成、評価する。今年度は様々なプロトン性イオン液体を前駆体とし、配位結合させる金属イオンとして電気化学的に安定であるZn2+,Al3+,Zr4+等を主に用いて合成検討を行った。その中で[dema][H2PO4](dema=dimethylethylammmonium)とZn2+から形成される錯体ネットワークはその配合比によってネットワークサイズ、つまり分子量を系統的に制御でき、いずれも10^-2 S/cmオーダーの高プロトン伝導度を示すことを明らかとした。これらの粘度は動的粘弾性測定から定量的に明らかとし、膜加工の最適な粘度に調整できることを確認した。また考えを拡張し、イオン液体とZn2+から合成されるプロトン伝導性錯体ネットワークを二種類準備し、それらの融液をブレンドすることによるプロトン伝導性ガラスの合成を行った。それぞれの錯体ネットワークの混合比を変えることでガラス転移点や粘度を変化できる。さらにある特定の混合比においてそれぞれの母構造よりも高いプロトン伝導度を示すことを確認し、ブレンドすることによる伝導パスの好適化が可能であることを示した。その中には前駆体として用いるイオン液体自体のプロトン伝導度より大幅に高いプロトン伝導度を示す例が存在し、配位結合により構築されるネットワークの構造やダイナミクスが様々な特性に有用に働くことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではイオン液体と金属イオンの組み合わせをうまく選ばないと均一なプロトン伝導性固体を得られないリスクがあった。今年度の種々検討で、とくにZn2+と様々なイオン液体の組み合わせで均一かつ高いプロトン伝導性錯体ネットワークを合成できることを見出したことから、当初の目的の一部を実現できた。また非晶質(ガラス)の特性を利用し、錯体ネットワークのサイズ、つまり分子量の制御という考えを顕在化させ、高プロトン伝導特性と粘度の調整が可能であることを示した。この成果は主たる目的である高プロトン伝導性膜の力学特性制御において有用である知見である。また融解性の錯体ネットワークを二種類利用し、融液をブレンドすることでプロトン伝導特性や粘度をさらに制御でき、ブレンドしたときに最も高いプロトン伝導度を示すことを確認した。イオン液体を前駆体とした様々なプロトン伝導性物質の幅広い特性を制御できる指針を示したことから、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた合成的知見、すなわちプロトン性イオン液体と電気化学的に安定である金属イオンの組み合わせを拡張し、より高いプロトン伝導度、広い作動温度領域、そして均一かつ成形加工性の高い膜をセンチメートルスケールで調整してゆく。また得られた物質の構造やダイナミクスを放射光、分光、電気化学的測定を併用して定量的に理解してゆく。一方で顕在化している膜の安定性(化学的安定性や力学的安定性)について改良を施すため、二価金属であるZn2+からより多価金属イオン(Al3+やZr4+)の活用にシフトし、プロトン伝導特性を下げることなく、安定な膜を作成する基礎技術を開発してゆく。
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Causes of Carryover |
当該年度により多くのイオン液体からなる錯体ネットワークの合成を進める予定であったが、試薬供給が滞ったこと、また解析に必須である分光装置の故障により、その一部の実施ができなかった。そのため次年度使用額が生じた。次年度早い時期に当初から計画している合成を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)