2023 Fiscal Year Research-status Report
硫黄と有機物の直接反応による高性能硫黄電池用正極の開発と科学
Project/Area Number |
22K19073
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
吉川 浩史 関西学院大学, 工学部, 教授 (60397453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷藤 尚貴 米子工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80423549)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 硫黄重合体 / 固体電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウム硫黄(Li-S)電池は、その理論容量が従来のリチウムイオン電池の約10倍(約1670 mAh/g)であり、硫黄が安価な材料であることから、次世代二次電池の正極材料として期待されている。しかし、電気化学反応における硫黄の電解質溶液への溶出により、サイクル安定性が低いという問題がある。本研究では、上記の問題を解決するため、逆加硫体や硫黄/アルコール複合体(SAC)を創製し、Li-S電池の正極活物質としての電極特性評価を行った。さらに、従来の溶液系電解質に代えて、固体電解質を用いた電池も作製し、その電池特性も検討した。 まず、材料についてであるが、炭素鎖長や級数の異なるアルコールと硫黄を重量比1:5で混合し、窒素雰囲気下、400 ℃で2 時間還流を行った。その後、未反応の硫黄を除くため、窒素雰囲気下300 ℃で加熱した。得られたSACを30wt%、トーカブラックを50wt%、PVDFを20wt%とする合材電極を作製し、Al 箔に塗工し、薄膜正極を作製した。これを用いて、LiTFSI、LiNO3、DOL、DME からなる電解液、カーボンコートセパレーター、およびLi 箔負極から成るLi-S電池を作成し、その電池特性を計測した。 各種SACを正極とするLi-S電池の放電容量のサイクル特性より、1-オクタノールから作製したSACの電池特性が良好であり、電流密度200mAh/gで初期容量は約1660mAh/g、100サイクル後でも約800mAh/gを維持した。また、級数を変えたヘキサノールを用いたSACでは第2級が最も良好で、1-オクタノールと同等の電池特性を示した。これらより、炭素鎖長とOH基の位置が電池特性に影響することが示唆された。さらに、固体電解質を用いた研究より、大幅に特性が上がることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有機分子を硫黄に挟むことで、リチウム硫黄電池の特性が大幅に上昇することを見出した。さらに、固体電解質の利用が有用なことも分かっており、研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は反応機構解明が重要となる。放射光施設を利用した、SのX線吸収端分光などを用いることでこれを実現する。これらで得られた結果を基に、さらに硫黄電池の改良に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度は順調に材料準備をすることができた。また、既存の装置を用いた測定で十分成果を出すことができた。そのため、次年度使用額が生じた。今後は、得られた成果の発表や測定出張などに使用するとともに、より計測ができるように既存の装置に加えて新たに装置を導入予定である。
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