2022 Fiscal Year Research-status Report
液晶の潜在的巨大位相遅延の機能を活用した広角・高速な波面制御装置の開発
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22K19075
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
井上 曜 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 准教授 (30723770)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 液晶 / 高速応答 / ビームステアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
光の波面を制御することでビームを曲げることが可能な技術が求められている。これは、車載LiDARのようなセンシング技術において、従来の機械駆動系では耐振動性・衝撃性という観点において心許ないためである。自動運転技術のような、故障が人命に直結するケースではシビアな環境耐性が求められ、波面制御型のスキャンシステムは理想的である。近年、機械的な駆動が無く、透過したレーザー光を素早く様々な角度に曲げられるような波面制御型のビームステアリングデバイスの実現が望まれている。このような応用が期待できる最先端テクノロジーは、光集積回路、及び液晶技術を利用したものが代表格になる。とりわけ、小型、低コストな性質が期待される液晶波面制御型ビームステアリング技術は大きな注目を集めている。 液晶を利用した主流となる波面制御型ビームステアリング技術は回折の原理を利用した光フェーズドアレイ法である。しかしながら、この方法はステアリング角の増大とともに回折効率が激減していき、数度程度のステアリングが限界となることで知られており、すでに限界がみえている。そこで、本研究課題では屈折の原理を利用した新規手法を提案する。アイディアを簡潔に説明するならば、ビーム断面の任意の一軸方向に線形かつ大きな位相差分布を形成することで、斜めに進行する光の波面を形成するというシンプルなものである。ただし、この方法では液晶層の厚さが数百ミクロン以上必要となり、応答速度の減少が大きな問題となる。 そこで応募者は、自身が持つナノサイズの空間に液晶を閉じ込めることで高速応答化が可能となる技術を用いることで、この屈折型波面制御デバイスの実現を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、1年目に本研究テーマが掲げる屈折型波面制御デバイスの実現に成功した。その成果はR4年度の学会で発表された。また、その新規手法の実現に関する成果についての論文への掲載が決まった(R5年度5月)。まだ解決すべき大きな課題が一つ残されているが、初年度の成果としてはおおむね計画通りかそれよりも少し進んでいる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に開発した屈折型波面制御デバイスは、理論上予想された通りのビームステアリングの挙動を示し、新規手法の開発に成功した。その特性は、連続的なビームステアリング、数kHzの高速変調、及び素子における挿入損失がほとんどないといった理想的な性質が確認されたが、一方で最大ステアリング角が約0.3度と小さすぎる欠点が存在する。この問題さえ解決することができれば、実用化に結び付く可能性が高く、今後はステアリング角の改善方法を検討していく必要がある。 今年度は、ステアリング角改善に向けて、液晶材料の最適化、複数の素子の積層、斜め入射等の改善手法を試していく予定である。
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Causes of Carryover |
残額と次年度の交付金を合わせて高額な機材を購入するため。 近赤外波長領域のレーザーダイオード、及びコントローラーを購入する予定である。
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