2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of an electrochemical reactor for flexible control of anion defects
Project/Area Number |
22K19079
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 崇司 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (20643232)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | アニオン欠陥 / 電気化学リアクター / 欠陥エンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自在なアニオン欠陥の制御を可能とする電気化学リアクターを開発し、アニオン複合化による機能開拓の実例を示すことを目標とする。研究前半では、ペロブスカイト関連酸化物に異種アニオンを導入し、アニオン複合化による結晶構造および電子構造への影響を評価する。さらに後半では、酸フッ化物を対象に、酸素組成とフッ素組成の両方を精密に制御することを目指す。本研究により、「アニオン機能を最大限活用する」ための技術確立を目指す。 今年度は酸素組成変動が許容されるペロブスカイト酸化物(La,Sr)CoO3 を対象として、電気化学的F導入および電気化学的Cl導入を検討した。F導入用電気化学リアクターは固体電解質としてフッ化物イオン伝導体(BaF2)を、イオン源となる対極としてPbF2-Pb混合物を使用して構築した。250℃にてリアクターに電流を流すことで(La,Sr)CoO3へのF導入処理を実施した。TOF-SIMS、XRD、XPSなどの分析により、元のペロブスカイト構造を維持したまま材料の内部までFが導入できることを確認した。またリアクターの通電量により、ドープ量を制御できることも確認できた。 一方、Cl導入用電気化学リアクターは固体電解質として塩化物イオン伝導体(KドープBaCl2)を、イオン源となる対極としてPbCl2-Pb混合物を使用して構築した。F導入と同様、250℃にてリアクターに電流を流すことで(La,Sr)CoO3へのCl導入処理を実施した。しかし各種分析の結果、Clはペロブスカイト相に導入できていなかった。酸化物イオン(1.40Å)に比べてサイズが大きな塩化物イオン(1.81Å)を導入するのは困難であるためと考えられる。Clドープについては、より大きな空隙を有した母材料を対象に再検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り電気化学的F導入によるアニオン複合化(酸フッ化物ペロブスカイトの合成)に成功した。電気化学リアクターのコンセプト通り、通電量により導入するF量をある程度制御できることも確認できた。酸素サイトへのF導入が比較的容易に能動制御できたのは、酸化物イオン(1.40Å)とフッ化物イオン(1.33Å)のサイズが近しいためであると考えられる。一方、単純な酸素空孔にサイズの大きなCl(1.81Å)を導入することは難しいことが確認できた。電気化学リアクターは印加電圧によりCl導入駆動力を制御できるという特徴を有している。この特徴を生かして超高Cl活量を利用すれば、アニオンのサイズ差を克服できる可能性があり、電気化学的アニオン複合化ならではの新規材料創出につながることが期待できる。 以上の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、ペロブスカイト酸化物への塩素ドープが困難であることが確認できた。来年度は大きな空隙を持った材料に対してCl欠陥の導入を検討する。例えば無限層ペロブスカイトやRuddlesden-Popper構造の酸化物を想定している。さらに印加電圧をおおきくすることで、Cl高活性条件での新規酸塩化物の合成を目指す。 これと合わせて、電気化学的アニオン複合化技術でなければ合成できない材料として、準安定相の合成に挑戦する。具体的には酸化物母材へのF導入を高速で進めることにより準安定な酸フッ化物の合成を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも実験に必要な消耗品が少なかった。来年度に追加実験に必要な消耗品を購入する。また合成したサンプルの分析を実施する。
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