2023 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒和フラストレーションに基づくホッピング伝導性液体電解質の設計
Project/Area Number |
22K19082
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
上野 和英 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30637377)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | カチオン輸率 / リチウム系二次電池 / 濃厚電解液 / 弱配位性 |
Outline of Annual Research Achievements |
蓄電デバイスの高性能化は持続可能社会実現の一翼を担う重要な研究開発課題であり、高出入力密度の二次電池を実現するために、高速カチオン輸送が可能な電解質の開発が望まれている。従来の電解液中のカチオン輸送は溶媒和されたカチオンの並進運動によって行われ、系の粘性に支配される。本研究では、液体中での効率的なイオンホッピング輸送を実現するため、濃厚電解液中で意図的にカチオンの溶媒和状態を不安定化(溶媒和フラストレーション)させることで、高活性なアルカリ金属カチオンを生成させる方法論を確立する。これにより、液体中でも粘性に支配されない、配位サイト間ホッピング機構によって高速イオン輸送を可能とし、高いイオン伝導性、高いカチオン輸率、容易な電極/電解質界面形成が可能な液体電解質を創出することを目的としている。本年度は、昨年度見出した直鎖エーテル系溶媒を用いた濃厚電解液をリチウム二次電池の電解液として評価する検討を行った。直鎖エーテル系溶媒を用いた濃厚電解液はその弱配位性(低いルイス塩基性)によりリチウム硫黄電池の電解液として用いた場合に多硫化リチウムの溶出を著しく抑制できることを確認した。また、エーテル系電解液であるためリチウム金属負極に対しても安定な電解液となり、可逆性の高いリチウムの溶解析出が可能なことも確認した。この直鎖エーテル系電解液を用いたリチウム硫黄電池は高いリチウムイオン伝導性により従来の多硫化リチウム難溶性電解液を用いたものよりも優れたレート特性を示すことを明らかにした。また、非対称リチウム塩を用いたスルホン系濃厚電解液においても、溶媒和状態を不安定化することによって高いカチオン輸率を実現し、これが特異な配位構造とその構造に基づく配位サイト間ホッピング機構に起因するものであることを実験的・計算科学的アプローチの両面から明らかにした。
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