2022 Fiscal Year Research-status Report
生命の起源における超分子的情報伝達モデルの提唱と検証
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22K19090
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高木 慎介 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (40281240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 哲也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (50252317)
石田 玉青 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (90444942)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 粘土鉱物 / 電荷密度 / 粒径 / ポルフィリン / 色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、粘土鉱物におけるSi(IV)元素のAl(III)元素による同型置換位置、すなわち、負電荷発生位置が情報源になるとの仮説に基づいているため、本研究の遂行において重要な無機化合物である粘土鉱物の合成を行った。特に、電荷密度(Si(IV)元素のAl(III)元素による同型 置換割合に相当する)、粒径といったパラメータに注目し、それらを系統的に変化させた粘土鉱物の合成とキャラクタリゼーションを行った。粘土鉱物の組成を、ICP,XRF,Al-NMRなどにより決定し、電荷密度としては5種類の異なるものの合成に成功した。それら粘土鉱物に対して、プローブ色素としてポルフィリンを吸着させたところ、ポルフィリンの光化学的な性質は明らかに粘土鉱物の電荷密度により変化することを見い出した。これらの成果は、粘土鉱物の電荷密度が、何かしらの情報としての性質を示しうることを意味しており、本研究課題の足掛かりとしての重要な知見を得たと言える。一方、粘土鉱物粒子の粒径の制御については、遠心分離機による分画によって一定程度の分画が可能であることを実験的に確認した。現在は、これまでの成果の論文化を進めており、また、これらの粘土鉱物をより大スケールで合成できるよう、合成容器、加熱方法などの準備を進めている。今後は、これらの粘土鉱物をホストとして、その表面上における、分子の振る舞いについて検討を行う予定であるが、その一端としてジアリルエテン誘導体の光異性化反応を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、粘土鉱物におけるSi(IV)元素のAl(III)元素による同型置換位置、すなわち、負電荷発生位置が情報源になると考えた。したがって、まずは、A(lIII)元素による同型置換量の異なる粘土鉱物の合成が必須である。研究実績の概要で記したように、初年度に実施する予定であった粘土鉱物の合成は概ね想定通りに進行している。今後は、これらの成果の論文化を行う必要がある。また、必要な粘土鉱物は得られたものの、それらを大量合成するためには、さらに、合成容器などの工夫が必要であることがわかった。合成容器については、さらに大きな容量のものを購入することで対応が可能であると見込んでいる、これらのことを総合して考えると、本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、A(III)元素による同型置換量の異なる粘土鉱物の合成を大スケールで行い、かつ、それらの粒径制御を行うことで、本研究での鋳型となる粘土鉱物の準備を完了させる。一方で、ゲスト分子の検討に着手する。具体的には、まず同型置換量の異なる粘土鉱物において、カチオン性ポルフィリン色素が、どのような吸着集合構造を作るのか、また、どのような単分子的な化学的性質を示すのかを観察する。その際には、吸収スペクトル、蛍光スペクトル、励起寿命の観察などを行う。また、疎水性相互作用(エントロピー由来)など、静電相互作用(エンタルピー由来)以外の相互作用に関する知見を得るために、カチオン性ポルフィリン色素以外に、中性の有機化合物もゲスト種として取り上げ、その吸着挙動も観察する予定である。中性の有機化合物としては、アントラセン、ピレンをはじめとする分子断面積の異なる複数種の平面性多環芳香族化合物を用いる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は粘土鉱物の合成そのものに重きを置いたため小スケールでの合成を行った。本来は、さらに大スケールでの合成が必要であるが、その大スケール合成を次年度に繰り越したために次年度使用額が生じた。
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