2022 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムマイニングによる糸状菌由来ペプチド系天然物の開拓
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22K19095
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾崎 太郎 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (40709060)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ペプチド / 生合成 / 糸状菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、糸状菌天然物の生合成研究で利用されている麹菌を宿主として、糸状菌由来の非リボソーム合成酵素(NRPS)遺伝子を発現し、新規ペプチド系天然物の獲得を試みる。従来は、標的とする生合成遺伝子をプラスミドDNAに連結してクローン化した後、麹菌に導入する方法を採用していた。しかし、20kbを超えるような長大なNRPS遺伝子の場合、遺伝子のクローン化や麹菌への導入の効率が低く、これらの点が研究の律速段階となると考えられた。そこで、2022年度は遺伝子導入の効率化を目的として、プラスミドの構築を省略してPCR等により調製したDNA断片を直接麹菌に導入して発現する方法の検討を進めた。すでに機能が判明しているテルペン合成酵素遺伝子やポリケチド合成酵素遺伝子を研究材料として本手法の適用可能性を検証した。 プロモーターやターミネーター、標的遺伝子をPCRにより増幅し、麹菌の形質転換に用いた。この際、各断片には互いにオーバーラップする配列ができるようプライマーを設計し、各断片が持つ相同配列間で組換えが起きることを期待した。また、Cas9遺伝子やガイドRNA配列を搭載したゲノム編集プラスミドを同時に麹菌へ導入し、標的遺伝子座での相同組換えを誘発することを計画した。プロトプラスト-PEG法を用いて麹菌にDNAを導入した結果、期待通り形質転換体が得られた。各形質転換体を培養し、代謝物を分析した結果、導入した遺伝子に由来する化合物の生産が確認できたことから、本手法により生合成遺伝子の導入と機能的な発現が可能であることが示された。生産が確認できた条件を基に導入する断片数や断片間のオーバーラップ長が形質転換効率に与える影響を調査し、NRPS遺伝子導入のための条件を設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は遺伝子導入法の検討を進め、期待通り手法の効率化を達成した。NRPS遺伝子については、研究室保有のゲノム情報から候補遺伝子を選定した。遺伝子の増幅や麹菌への導入も予備的に検討を進めており、ペプチド系天然物の探索を進められる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究室保有糸状菌株のゲノム情報から、NRPS遺伝子を選定し順次麹菌を宿主として異種発現することで天然物の生産を検討する。生産が確認できた化合物については、単離と構造解析を進める。また、NRPS遺伝子周辺に修飾酵素遺伝子が存在する場合は、それらの遺伝子と共発現することでより修飾が進んだ化合物の生産を試みる。
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Causes of Carryover |
当初計画より検討が順調に進展したため、消耗品等の物品費が抑えられた。次年度は、さらに進展が見込まれるため、消耗品や遺伝子合成等の物品費、成果発表旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)