2023 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムマイニングによる糸状菌由来ペプチド系天然物の開拓
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22K19095
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾崎 太郎 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (40709060)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 生合成 / ペプチド / ゲノムマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、糸状菌のゲノム上に潜在する非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)遺伝子を対象とするゲノムマイニングを行い、麹菌を宿主とする異種発現系を利用して新規天然物の獲得を目指す。2022年度にNRPS遺伝子を宿主である麹菌に導入するための条件を検討したため、2023年度は設定した条件を利用して、保有菌株のゲノム上から見出したNRPS遺伝子を対象として機能解析を進めた。前年度に設定した条件に沿って各遺伝子を複数の断片に分割し、各菌株のゲノムDNAを鋳型とするPCRにより増幅した。目的のサイズのDNAが増幅したことを確認したのち、濃度を調整し、プロトプラスト-PEG法を用いて麹菌に導入した。得られた形質転換体を、液体培地及び固体培地で培養し、LC-MSを用いて各形質転換体から抽出した代謝産物を分析した。遺伝子を導入していない麹菌の代謝物を対照として比較分析を行った結果、対象とした12種のNRPSのうち数種で形質転換体に特異的なピークを確認することができたため、特に顕著なピークが確認できた1種についてさらに解析を進めた。当該ピークを指標に化合物を精製し、NMR及び質量分析による構造解析を進めたところ、トリペプチドであることが示唆された。マーフィー法を用いて構成アミノ酸を分析したところ、Lアミノ酸及びDアミノ酸がどちらも含まれていることが明らかになった。標的としてNRPSにはエピメラーゼ(E)ドメインが含まれており、Dアミノ酸が確認されたことから、得られたトリペプチドがNRPSに由来するものであることが支持された。LC-MS及びMS/MSを用いてさらに解析を進めたところ、上記のトリペプチドと共通する部分配列を有する複数の生成物が存在し、NRPSにより生合成されたペプチドが分解されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに設定した遺伝子導入法、条件を用いて、NRPS遺伝子の機能解析・スクリーニングを進められることを実証できたため。また、実際に生成物に由来すると考えられるピークを同定することにも成功した。生成物の分解が問題になりうることが新たに示唆されたため、この点を検証し、生成物の同定につなげる。
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Strategy for Future Research Activity |
長大なNRPS遺伝子を麹菌内で再構築し、機能的に発現できることを実証した。一方、NRPSにより生合成された産物が分解される可能性が新たに示唆されたため、2024年度は以下の方針で研究を進めて、生成物の同定を目指す。 機能が確認できたNRPSについては、酵素内の各モジュールに存在するアデニレーションドメインを組換えタンパク質として調製し、基質特異性を調査する。各アデニレーションドメインが活性化するアミノ酸の種類やEドメインの配置などから、当該NRPSにより生合成されるペプチドの構造を合理的に推測する。得られた化学構造から類推されるm/z値などを指標に形質転換体抽出物から目的化合物を探索する。これと並行して、予測構造のペプチドを調製して標品とする分析も検討する。 また、NRPSの再構成が可能であると実証できたことから、さらに新たな標的を選定し、新規ペプチド系天然物の探索を継続する。
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Causes of Carryover |
当初計画より検討が順調に進展したため、消耗品等の物品費が抑えられた。次年度は、さらに進展が見込まれるため、消耗品や遺伝子・ペプチド合成等の物品費、成果発表旅費等に使用する予定である。
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