2022 Fiscal Year Research-status Report
修飾核酸塩基の金属配位に基づくDNA鎖置換・ブランチマイグレーションの速度論制御
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22K19100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹澤 悠典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70508598)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | DNA / 鎖置換反応 / 速度論 / 金属錯体形成 / 修飾核酸塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、動的DNAナノテクノロジーの根幹をなすDNA鎖置換反応の速度論を、修飾ピリミジン塩基の金属配位により精密に制御することを目的としている。本年度は主に、ウラシル塩基の5位にイミノ二酢酸配位子を導入したN,N-ジカルボキシメチル-5-アミノウラシル(dcaU)塩基を用い、DNA二重鎖中での金属錯体形成、および金属イオン添加・除去によるDNA二重鎖の組み換え反応について検討した。二重鎖融解実験から、一対のdcaU-dcaU対を含むDNA二重鎖が1当量のGd(III)イオン存在下で大きく安定化されることを見出した。これは2:1錯体(dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対)の形成により、二重鎖が架橋されたためである。一方、dcaU塩基は水素結合型の天然様dcaU-A塩基対も形成した。dcaU-A塩基対を含む二重鎖は、Gd(III)イオンの添加により不安定化した。結果として、Gd(III)イオンの有無により二重鎖安定性が逆転し、dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対とdcaU-A塩基対の相互変換が可能であることが示唆された。さらに、dcaU塩基を含むDNA鎖を用いて、Gd(III)イオンの添加および除去による二重鎖形成の制御を試みた。非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および蛍光修飾した相補鎖を用いた蛍光時間変化測定から、Gd(III)イオンを外部刺激として、DNA鎖の会合挙動を等温下で可逆的に変換できたことが示された。今後は、DNA鎖置換反応の速度論を詳細に解析し、修飾ウラシル塩基の数や導入位置に基づく速度論の制御を検討する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、動的DNAナノテクノロジーの根幹をなすDNA鎖置換反応の速度論を、修飾ピリミジン塩基の金属配位により制御することを目的としている。本年度は主に、ウラシル塩基の5位にイミノ二酢酸配位子を導入したN,N-ジカルボキシメチル-5-アミノウラシル(dcaU)塩基を用い、DNA二重鎖中での金属錯体形成、および金属イオン添加・除去によるDNA二重鎖の組み換え反応について検討した。新たに設計したdcaUヌクレオシドは、5-ブロモ-2’-デオキシウリジンを原料として合成し、ホスホロアミダイト法によりDNA鎖中に導入した。二重鎖融解実験から、一対のdcaU-dcaU対を含むDNA二重鎖が1当量のGd(III)イオン存在下で大きく安定化されることを見出した。これは2:1錯体(dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対)の形成により、二重鎖が架橋されたためである。一方、水素結合型の天然様dcaU-A塩基対を含む二重鎖は、Gd(III)イオンの添加により不安定化した。結果として、Gd(III)イオンの有無により二重鎖安定性が逆転し、dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対とdcaU-A塩基対の相互変換が可能であることが示唆された。 さらに、dcaU塩基を含むDNA鎖に対し、dcaUを含む相補鎖、およびA塩基を含む相補鎖を混合し、Gd(III)イオンによる二重鎖形成の制御を試みた。非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および蛍光修飾した相補鎖を用いた蛍光時間変化測定から、Gd(III)イオンを外部刺激として、DNA鎖の会合挙動を等温下で可逆的に変換できたことが示された。 以上のように、新規dcaU塩基を開発し、Gd(III)イオンを外部刺激としてDNA鎖の会合挙動を等温下で可逆的に変換することに成功したことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に、5位にイミノ二酢酸配位子を導入した修飾ウラシル塩基(dcaU)を用い、DNA二重鎖中での金属錯体形成、および金属イオン添加・除去によるDNA二重鎖の組み換え反応の検討を行った。 次年度は、DNA鎖置換反応の速度論を詳細に解析し、修飾ウラシル塩基の数や導入位置に基づく速度論の制御を検討する。また、すでに報告した5-ヒドロキシウラシル(UOH)や5-カルボキシウラシル(caU)塩基も用い、鎖置換反応の一過程であるブランチマイグレーションの速度制御に挑む。さらに、修飾ウラシル塩基を用いたDNA鎖置換反応を素反応として様々なDNA分子回路を構築することで、金属イオンを調節因子としたDNA分子回路の動作制御の実現も目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、新たに開発したイミノ二酢酸修飾ウラシル塩基(dcaU)を導入したDNA鎖を用い、Gd(III)イオン添加および除去によるDNA二重鎖の会合制御ができることを見出した。新規修飾塩基を用いた鎖置換反応の検討は順調に進みつつある一方で、鎖置換反応の速度論の解析は次年度に行うことになった。そのため、蛍光標識DNA鎖など、予定した試薬・消耗品の一部を次年度に購入することになった。 次年度は、引き続き修飾DNA鎖の合成に必要な有機合成試薬・DNA合成試薬・各種器具を購入する。また、DNA鎖置換反応の速度論解析のために、蛍光修飾DNA鎖の受託合成や、微量測定用の分光セルやプレートリーダー用のプレートの購入を予定している。さらに、共通機器の使用料や、国内・国際学会における成果発表のための旅費も支出する。
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Research Products
(19 results)