2022 Fiscal Year Research-status Report
生物間相互作用の視点から解き明かす植物特化代謝物難分解性配糖体の生物学的役割
Project/Area Number |
22K19123
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 亨 東北大学, 工学研究科, 教授 (80268523)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | ゴマリグナン / β-グルコシダーゼ / セサミノール |
Outline of Annual Research Achievements |
植物特化代謝物難分解性配糖体の代謝動態解明の一材料として,ゴマ種子の発芽に伴うゴマリグナン(セサミノールとその関連リグナンおよびそれらの配糖体)の代謝動態を解析した.その結果,アグリコンであるセサミノールの蓄積は見られず,その三糖配糖体STGの分解とともにソホロース型二糖配糖体2SDGの増加と蓄積が確認された.ゴマ種子発芽後10日目にはゴマリグナンとして2SDG及びセサミノールモノグルコシド(SMG)のみが検出され,特に2SDGの著量の蓄積が顕著であった.さらに2-SDGの蓄積はゴマ子葉中に維持され,ゴマ発芽6週間後の子葉中には2SDGがほぼ唯一のリグナン化合物として蓄積していた.2SDGはゴマ植物体内(子葉中)で長期間にわたり維持され,子葉が枯れた状態でも未分解のままであったことから,ゴマ発芽後のリグナン蓄積の主要な最終化学形態は2SDGであることがわかった.子葉はやがて土中に落下し,そこに含まれている2-SDGは,β-1,2結合分解能力を持つ限られた土壌微生物によって分解され何らかの機能を果たすことが考えられた.さらに,発芽ゴマ種子の細胞抽出物のクルードアッセイよってSTG分解活性を確認したところ,ゴマ内在性のβ-1,6結合特異的なβ-グルコシダーゼの存在が示唆され,STGからの上述の難分解性セサミノール配糖体(2-SDG)の生成・蓄積の鍵酵素となっていることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発芽ゴマ種子中の2-SDG蓄積に関わるβ-1,6結合特異的β-グルコシダーゼの同定に時間を要しているが,いくつかの候補に絞りこむことができている.
|
Strategy for Future Research Activity |
発芽ゴマ種子中の2-SDG蓄積に関わるβ-1,6結合特異的β-グルコシダーゼの遺伝子ならびに機能同定を行うとともに,2-SDGと土壌微生物との相互作用について調べていく予定である.
|
Causes of Carryover |
次年度は,研究計画において予定される研究タスクの性質上多額の出費が予想される.当該年度は主としてセサミノール配糖体の植物体内動態の解析と2-SDG生成・蓄積に関わる鍵酵素の活性検出に注力したが,これらの研究タスクについては可能なかぎり既存の設備・備品および試薬・消耗品を使用することにより,限られた財源を今後の展開に有効に利用できるように図った.
|