2022 Fiscal Year Research-status Report
Reversible detection of amino group and protein labeling methodology
Project/Area Number |
22K19125
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今野 博行 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50325247)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 可逆的アミノ基検出技術 / ラジカル酸化反応 / 蛋白質ラベリング技術 / 分子認識 / 二次構造制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
N-ヒドロキシルフタルイミド(NHPI)誘導体は古くから脱水縮合反応の活性化や酸化反応触媒として用いられていたが、その用途に限りがあった。我々の研究グループは近年、NHPIの構造的特徴に着目し、保護基導入試薬の開発やペプチド固相合成の反応追跡試薬、さらに触媒的空気酸化反応への活用を報告してきた。NHPI内の反応部位が同じであっても、周辺の化学構造をチューニングすることによって様々な機能を引き出すことができることがわかってきた。このようにユニークな分子であるNHPIについて研究を実施した。今年度は準備段階として、光学活性NHPI誘導体の基質合成、NHPI誘導体の官能基化を検討した。その結果、5種のNHPI誘導体の合成に成功し、さらに光学活性NHPI誘導体のビナフチル骨格を得ることに成功した。NHPI誘導体には二量化した構造やとりフルオロメチル基を導入したものを含んでいる。また、NHPI誘導体は空気存在下においてアルデヒドを酸化し、過酸を生じさせることを見出していた。そこで、さらなる展開を目指し新しいNHPI誘導体による酸化反応の反応性、バイヤービリガータイプの酸化反応を検討した。その結果、ベンズアルデヒド存在下にシクロヘヘキサノンに対するバイヤービリガー反応が進行し、ラクトンを得ることができた。最後にNHPI誘導体を用いてLys含有ペプチドの二次構造制御を検討した所、Lys側鎖と反応しうることがわかり、可能性を見出すことができた。 今後はNHPI誘導体、特に光学活性体の合成を達成し、キラルアミンの認識を実施し、さらに光学活性誘導体の構造展開を行う。またバイヤービリガー反応については添加物を入れない条件の最適化をし、さらに基質の適用範囲の調査を実施する。最後にペプチドラベリング化による二次構造制御の配列、反応条件を最適化していく予定である。これらの試みは有機化学とカーボンニュートラルの両立を目指したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずNHPI誘導体の官能基化を検討した。すなわちフェニル基に置換基を導入すること、N-ヒドロキシ基を修飾することから実験を開始した。フェニル基への置換基導入は、テトラフェニルやジフェニルを持つNHPI誘導体の前駆体を酸無水物として入手し、それぞれをヒドロキシルアミン塩酸塩で処理することで合成した。また、以前合成したNHPI誘導体と合わせてN-ヒドロキシ部分を臭化ベンジルや臭化ピリジルメチルなどを使ってエーテル化することに成功した。 次に光学活性NHPI誘導体合成の足がかりとしてビナフチル骨格の合成を検討した。まずナフチルアルデヒド誘導体とフェニルリチウム誘導体のカップリング反応を行い、次にフマル酸ジエチルとのディールス・アルダー反応、続く脱水反応を連続的に進行させることでビナフチル骨格の形成に低収率ながら成功した。今後は収率の改善とN-ヒドロキシル化を行い、望む誘導体を得る予定である。 一方で、NHPI誘導体の空気酸化反応を検討した。以前報告した結果をもとに新しく合成したNHPI誘導体を用いたドデカナールの酸化を検討した所、以前最適化したNHPI誘導体を超えることはなかった。そこでマイクロウェーブ照射下に本酸化反応を実施した所、室温では反応の進行が確認されなかったものの、40-50℃の条件では酸化反応が50倍程度加速することがわかった。空気酸化反応は反応の進行が遅いことが欠点であったが、マイクロウェーブを用いることで十分な反応速度を有することがわかった。次にケトン体に対してバイヤービリガー反応を検討した。NHPI誘導体存在下、基質にシクロヘキサノンを用いた所、望む反応が進行しラクトン体が得られることがわかった。従来のバイヤービリガー反応と同様、反応の進行が遅く、ベンズアルデヒド等の添加物が必要であった。これはベンズアルデヒドが酸化され過酸が生成し、この過酸がケトンを酸化したものと考察される。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結果と研究計画に基づき、さらに研究課題を推進する。現在まで得られた結果から、NHPI誘導体に隠された潜在的能力は高く、様々な検討を行っていく必要があると思われる。 まず、NHPI誘導体合成では、芳香環周辺に様々な官能基を導入する。ハロゲンやアルキル基、フェニル基などを画一的な物を 導入してきたが、新たに窒素、酸素、硫黄、ホウ素などの導入を検討し、NHPIとしての反応性を見極める。また引き続き光学活性体NHPI誘導体の合成を検討し、設計した分子の入手に努める。 酸化反応では添加物を必要としない触媒的バイヤービリガー反応の可能性を追求するため最適条件を精査する。基質一般性についても入手可能な限り様々なケトン体に適用する。一方で酸化反応としてチオールの酸化、オレフィンの酸化反応などにもその適用範囲を広げていく予定である。 ラベル化実験では様々なLys含有ペプチドを用いることで反応特異性を見極める。また分子内に複数Lys残基が入ったタイプにも挑戦し、蛋白質への検討に向けた足掛かりとする。保有するNHPI誘導体とアルキルアミン、アミノ酸、ペプチドとの反応性を網羅的に調査することで最適構造を見出していく。 以上のように研究計画に沿って行う検討と新しい知見によりさらなる検討が必要なもの、両者について実験を行い、目標達成に向けて引き続き研究を継続していく。
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