2022 Fiscal Year Research-status Report
Catabolite repression of amino acid metabolism
Project/Area Number |
22K19129
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
和地 正明 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90192822)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ジペプチド / アミノ酸 / 代謝制御 / カタボライト抑制 / GcvB small RNA / グルタミン / アラニルグルタミン |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチダーゼ多重欠損株(Δpeps株)を用いてジペプチドの添加によって発現量が変化する遺伝子を同定するために、RNA-Seq解析用の試料調製時期の条件検討を行った。しかしながら、ジペプチド添加M9グルコース最少培地で増殖してきた細胞にはジペプチドの取り込み担体(ジペプチドパーミアーゼ)をコードするdppオペロンに変異が導入されていることが判明した。従って、この細胞からRNAを抽出してRNA-Seq解析を行ってもジペプチドの影響を正しく評価できないと判断し、新しい実験系の検討を行った。 大腸菌のグルタミン要求性変異株(ΔglnA株)をM9グルコース最少培地にて培養し、ジペプチドであるアラニルグルタミンと単体のグルタミンを添加した時の細胞の増殖と、添加したジペプチド及びアミノ酸の消費速度を測定した。グルタミン源として10 mMアラニルグルタミンと10 mMグルタミンをそれぞれ単独で加えたときは、アラニルグルタミンを添加した時の方がグルタミンを添加した時よりも短いラグ時間で増殖を開始し、その後の増殖速度も速かった。この時、アラニルグルタミンはグルタミンより早く消費された。興味深いことに、10 mMグルタミンに少量(0.5 mM)のアラニルグルタミンを添加すると、10 mMアラニルグルタミン添加時と同じように増殖した。このことから、単独で加えた場合にはアラニルグルタミンはグルタミンより早く資化されること、また少量のアラニルグルタミンはグルタミンの代謝を促進することが示唆された。そこで、この条件でジペプチドにより発現の変化する遺伝子の解析を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では本年度は、ペプチダーゼ多重欠損株Δpeps株を用いてジペプチドの添加によって発現量が変化する遺伝子をRNA-Seq解析により同定する予定であったが、ジペプチド添加M9グルコース最少培地で増殖してきた細胞にはジペプチドの取り込み担体(ジペプチドパーミアーゼ)をコードするdppオペロンに変異が導入されていることが判明した。従って、この増殖してきた細胞からRNAを抽出してRNA-Seq解析を行ってもジペプチドの影響を正しく評価できないと判断し、新しい実験系の構築を行ったため当初の実験計画よりやや進行が遅れた。 アラニルグルタミン以外のジペプチドがΔpeps株の増殖に対する与える影響については計画通り進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初のペプチダーゼ多重欠損株Δpeps株を用いてRNA-Seq解析を行う計画に替えて、グルタミン要求性変異株(ΔglnA株)を用いた実験を行う。ΔglnA株にジペプチドであるアラニルグルタミンと単体のグルタミンをそれぞれ単独または同時に添加した時の遺伝子発現の変化を調べる。特にグルタミン周りの代謝酵素、グルタミンおよびジペプチドの取り込み担体、窒素代謝関連転写因子等の遺伝子に注目して定量RT-PCR解析により発現量の変化を調べる。 アラニルグルタミン以外のペプチドがペプチダーゼ欠損株(Δpeps株)の増殖に対する与える影響については、さらに多種類のペプチドについて検討を行う。またΔpeps株のみならず野生株の増殖を抑制したアラニルロイシンとロイシルバリンについては、gcvB変異や特定のアミノ酸の添加によって増殖抑制が解除されるかを調べる。 その他の実験については当初の予定通りに行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していたRNA-Seq解析を行わなかったためその経費が不要となった。研究成果の発表のために日本ゲノム微生物学会年会への2泊3日の旅費を計上していたが、1泊2日としたために当初の予定より少額となった。予定していた論文を投稿できなかったため論文掲載料が不要となった。 新たに実施することになった実験で培地中のジペプチドとアミノ酸の定量を行うため、共通機器のHPLCとLC/MS等を頻繁に利用する。そのためその他経費として共通機器利用料に充てる。
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