2022 Fiscal Year Research-status Report
光合成の迅速制御を可能にする新規レドックス制御経路
Project/Area Number |
22K19130
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 啓亮 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40632310)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
Keywords | レドックス制御 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化還元を基盤としたタンパク質翻訳後修飾であるレドックス制御は、植物の光合成制御において必須の役割を果たしている。研究代表者は、この制御システム全体の分子機構と生理的役割の解明を目指して研究を行っている。その過程において最近、これまで知られていなかった還元力伝達経路が葉緑体に存在し、光合成反応を光照射に応答して迅速に制御している可能性を示唆する結果を得た。そこで本研究課題では、未知の還元力伝達経路の実体を解明し、新規の光合成制御メカニズムを明らかにすることを目的とした。 本年度は、これまでに研究代表者自身が見出した葉緑体チラコイド膜の新規レドックス分子候補に着目し、その機能解析を進めた。その結果、以下の進展があった。1)このレドックス分子のペプチド断片を抗原として特異的抗体を作製した。この抗体を用いたウェスタン解析によって、このレドックス分子はチラコイド膜のストロマ側に表在していることを明らかにした。2)このレドックス分子の生化学的特性に迫るために、全長のリコンビナントタンパク質の作成を試みた。大腸菌を用いた系ではどのような条件下でも発現が認められなかったが、無細胞合成系によって発現を確認することができた。3)このレドックス分子の生理的機能に迫るために、ゲノム編集(CRISPR/Cas9)によってシロイヌナズナのノックアウト株の作出を試みた。そして、異なる変異を含んだ複数の株を単離することができ、ウェスタン解析によって完全にタンパク質発現が抑制されていることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が注目している新規レドックス分子候補の特異的抗体やノックアウト株を作出できたことは予定通りの進展であるが、in vitroでの機能解析を行うための精製タンパク質の調製に当初の予定以上の時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
タンパク質レベルでの機能解析を進め、このレドックス分子候補が還元力伝達活性を持つのか、その場合どのような葉緑体酵素を標的とするのかなどの分子の特徴づけを行う。また、作成したノックアウト株を用いて様々な条件での生長解析や光合成解析などを行い、この分子の欠損が与える生理的インパクトを評価する。
|
Causes of Carryover |
分析対象とするタンパク質の発現・精製が当初の計画通りに進まず、消耗品試薬やディスポーザブル器具用に計上していた分が未使用額として生じた。翌年度に、翌年度分と合わせて生化学解析用、生理学解析用の消耗品の購入費として使用する。
|