2022 Fiscal Year Research-status Report
Junction of drug transport and lipid transport
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22K19134
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 泰久 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10415143)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 薬物輸送体 / 脂質輸送体 / 機能分化 / ABCタンパク質 / タンパク質進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物輸送体は小腸や肝臓、腎臓、血液脳関門などに発現し、環境中に存在する有害な化合物から生体や重要な器官を保護している。薬物輸送体は構造に関連のない、多種多様な化合物を認識して輸送する事がその特徴であり、これは一般的な酵素に見られる「鍵と鍵穴」モデルからは大きく逸脱している。本研究では薬物輸送体と共通の祖先を持つと考えられるリン脂質の輸送体との比較研究によって、薬物輸送体が様々な構造の化合物を輸送する機構を明らかにすることを目的とした。2022年度の研究では、脂質輸送体の改変に取り組み、薬物輸送と脂質輸送の機能分化に重要であると考えられる領域を明らかにした。また、これらの領域を脂質輸送体に導入することで脂質輸送体に弱いながらも薬物輸送活性を持たせることに成功した。一方で、改造した脂質輸送体の薬物輸送能が想定よりも低かったことから、他にも重要な領域があると推測されたため、実験を追加して重要領域の検討を実施している。また、薬物輸送体の構造解析研究にも着手し、立体構造から機能分岐を明らかにする研究の基盤技術の構築を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究では、薬物輸送と脂質輸送の機能分岐点となるモチーフの一つを明らかにするという成果を得た。この結果は薬物輸送体が誕生した経緯を理解する上で本質的な解に迫る知見である。一方で、改造した脂質輸送体の薬物輸送活性が想定よりも低かったことから、機能分岐に重要な未同定のモチーフが想定していない部分に存在することも明らかになった。近年、クライオ電子顕微鏡による構造解析研究が飛躍的に発展している。本研究でも、構造解析を追加することで立体構造レベルで機能分岐機構を明らか出来ると着想し、構造解析研究に着手した。研究初年度には再構成系や電子顕微鏡による観察条件の最適化に取り組み、ナノディスクに再構成された状態の多剤輸送体の電子顕微鏡像を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、薬物輸送と脂質輸送の機能分化に重要な領域を探索し、改造脂質輸送体の機能亢進を模索する。具体的には初年度に明らかになった膜貫通領域に加え、輸送動作の支点となる様な構造上重要と予測される部位の改変を行う。また、脂質2重膜に埋め込まれた状態の立体構造を決定し、薬物輸送能の獲得機構について立体構造レベルでの理解を目指す。
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Causes of Carryover |
研究初年度では機能分化に重要な領域が複数存在するという発見から、新たな機能分化機構の探索に注力し、当初予定していた改造脂質輸送体の詳細な解析を実施しなかった。また、研究当初には予定していなかった構造解析を取り入れたため、再構成条件などの技術開発を行う必要が生じた。研究初年度に予定していた改造脂質輸送体の生化学解析を2年度目の前半に実施する予定である。
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Research Products
(6 results)