2022 Fiscal Year Research-status Report
植物ミトコンドリアゲノム形質転換による窒素固定能獲得
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22K19140
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 光宏 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (00372342)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 窒素固定 / ニトロゲナーゼ / タバコ |
Outline of Annual Research Achievements |
根粒菌など一部の原核生物が行う窒素固定反応はニトロゲナーゼにより触媒される。このニトロゲナーゼを作物に導入し、窒素固定を行わせることで窒素肥料を施肥することなく、高収量・高品質の作物生産を維持することが期待できるが、光合成で発生する酸素に対するニトロゲナーゼの脆弱性や、反応に必要な電子やATP量が不十分であることから、ニトロゲナーゼを導入した高等植物の作出は成功していない。真核生物オルガネラであるミトコンドリアは、1)電子伝達系を介して酸素が水に還元されること、2)ATP合成酵素によりATPが大量に合成されること、3)電子伝達系より活性酸素の原因となる電子が漏出することなど、高等植物にニトロゲナーゼを導入する場としての条件を満たしていると考えられる。 そこで、本研究では、タバコミトコンドリアゲノムに窒素固定能をもつシアノバクテリア、Leptolyngbya boryanaのnif遺伝子クラスターを含むDNA領域(Tsujimoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2014)を導入する。また、より低酸素環境を実現するため、nif遺伝子クラスターは根のミトコンドリア特異的に発現させる。まず、ミトコンドリア移行シグナルと窒素固定遺伝子群の発現を制御する遺伝子、cnfRをコードする遺伝子を融合し、根細胞特定的なプロモーターで制御した外来遺伝子を作成し、核ゲノムへ組み込む。この方法によりニトロゲナーゼの酸素による不可逆的な失活を避けて、窒素固定能を獲得した形質転換タバコを作出することができると考えている。現在、タバコ形質転換体の作出に向け、プラスミドの作成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
nif遺伝子クラスターを含むDNA領域は約30kbと大きいため、プラスミドへの導入が難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
nif遺伝子クラスターを含むDNA領域および、ミトコンドリア移行シグナルと窒素固定遺伝子群の発現を制御する遺伝子、cnfRをコードする遺伝子を融合し、根細胞特定的なプロモーターで制御した融合遺伝子をそれぞれプラスミドに導入する。それらのプラスミドをそれぞれ、タバコミトコンドリアゲノムおよび、核ゲノムに導入する。
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Causes of Carryover |
プラスミド作成に遅れが生じているため。次年度以降、DNAシークエンス解析や遺伝子導入に必要な試薬および消耗品を購入予定である。
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