2023 Fiscal Year Research-status Report
脂質一重膜界面とゴムのダイナミクスによるゴム合成活性発現と分子量制御機構の解明
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22K19143
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山下 哲 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70361186)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 天然ゴム / イソプレノイド / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,天然ゴム生合成の未解決問題である「ゴム合成酵素の活性発現機構」と「ゴム分子量制御」を,ゴム貯蔵器官であるゴム粒子に存在する膜タンパク 質・脂質およびゴム粒子内部のダイナミクスをキーとして解明することを目的としている。天然ゴムは植物が蓄積する疎水性高分子であり,平均分子量が100万 に達するポリイソプレンである。天然ゴムはパラゴムノキの樹液として採取され,ゴム粒子(RP)と呼ばれる脂質小胞に格納されている。また,ゴム合成酵素はRP の膜表面にあり,モノマーを与えると,新規な重合反応により生じたゴムが膜を横切ってRP内部へ追加される。ラテックスには様々なサイズのRPが存在するが, 平均粒径が小さいゴム粒子は高分子量ゴムを含み,表面酵素によるゴム重合活性が高い。それに対し,平均粒径がより大きいゴム粒子は,低分子量ゴムを含んで おり,表面酵素の重合活性が低い。このことから,ゴム合成酵素の活性は,膜に存在する因子や,膜の特性に依存して,変動している可能性が高い。RPの膜には 多くの膜結合性タンパク質が存在するが,Rubber Elongation Factor(REF)が最も多量に含まれる。REFをRPやリポソームへ再構成すると,膜粒子が分裂する現象が観察されているため,生体膜の変形と出芽を誘発する因子であると考えられる。 今年度の実績として,精製した組換え型REFの15N標識体を調製することに成功し、長期間のNMR測定に耐え得る安定性の高いものであることを確認した。その後、13C-15N二重標識体の調製も検討し、測定対象となる画分の収量が最大となる最適化を行った。今後,ゴム合成酵素等との共存によるシグナルの変化を測定し、REFとその他の因子の相互作用解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パラゴムノキのゴム粒子に多量に存在する膜タンパク質であるREFの組み換え体を大腸菌内でインクルージョンボディとして発現させ,界面活性剤を用いたリ フォールディングにより,可溶化することができ,高純度に精製する手法を15N標識体、および13C-15N二重標識体の調製へ応用し、特にコストの高い後者については、測定に必要な画分が最大となるような最適化を遂行できた。現在,1H-15N HSQCなどのNMR測定を順次進めており,今後は,パートナータンパク質であるSRPPやHRBPなどの共存下におけるREFの状態変化を確認する。また、13C-15N二重標識体のスペクトルの主鎖帰属を試みており、130残基あまりの全長配列から、アミドプロトンの無いプロリン残基(9残基存在)を除き、その半数以上の帰属を試みている。以上により,ゴム粒子膜のダイナミクスに関連すると思われるREFの構造解析と,相互作用するタンパク質との溶液中ダイナミクスの観察 が進んでいる。また,組換え型REF、ゴム粒子、脂質一重膜粒子等を用いて、膜の状態の変化が誘導されるかどうかに関して、中性子回折の実験を行うための準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては,組換え型REFのドデシルマルトシド界面活性剤とのミセルの状態をNMRで測定することを継続する。他の界面活性剤については、すでにコール酸ナトリウムや、オクチルグルコシド、Triton-X100などは試行しており、その溶液中ミセル状態の安定性はドデシルマルトシドが最も高いものの、コール酸ナトリウムなどにおいて、REFの二次構造変化を示唆するような円二色性分光法のデータが得られており、REFの多量体構造もやや大きくなることが予想されているため、興味深い。以上と関連して,ダイズ由来リン脂質であるホスファチジルコリンを主とした脂質を用いて、リポソームを調製し、REFとの混合アッセイおよび混合体の精製を行っており、界面活性剤とリン脂質の急速な交換反応が溶液中で起こることが示唆されている。そこで、我々が最近開発した脂質一重膜粒子を使用した場合、どのような変化が起こるかを観察する予定である。安定同位体ラベルしたREFについては,ドデシルマルトシドミセルに深く埋もれている領域があると予想されているため、それ以外の溶液と近い領域の主鎖帰属を完了させる予定である。また、現在精製している全長REFのN末端領域に、数残基程度ではあるが、精製中の切断を受けやすい領域が存在するため、あらかじめ対応する部分を除いたコンストラクトを作成したい。この改良型REFのほうが、主鎖帰属および、パートナータンパク質や脂質との相互作用解析に適しているかどうかを見極めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の実験計画の中で、使用する予算についてはほぼ計画通りの執行となり、物品費、旅費、その他の経費共に内容に問題はない。次年度使用額(B-A)については、234円生じたが、期間後期に購入した一般試薬の価格が変動したため、微細な余剰額が出たものを思われる。その差額については、今年度の物品費として、少額の一般試薬またはマイクロピペットのディスポーザブルチップ等に充て、適正に使用していく計画である。
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[Presentation] Protein engineering, purification and characterization of a regulatory protein for cis-prenyltransferase from plant2023
Author(s)
Taro YANAI, Kohei TAKESHITA, Riki IMAIZUMI, Natsumi TAMURA, Haruhiko YAMAGUCHI, Yukino MIYAGI-INOUE, Kunishige KATAOKA, Masaki YAMAMOTO, Toru Nakayama, Seiji TAKAHASHI, Satoshi YAMASHITA
Organizer
TERPNET 2023
Int'l Joint Research
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[Presentation] Structural and functional importance of the C-terminal conserved region of neryl diphosphate synthase from tomato2023
Author(s)
Riki Imaizumi, Shuto Misawa, Taro Yanai, Kohei Takeshita, Hiroaki Matsuura, Haruhiko Yamaguchi, Yukino Miyagi-Inoue, Naoki Sakai, Kunishige Kataoka, Masaki Yamamoto, Toru Nakayama, Seiji Takahashi, Satoshi Yamashita
Organizer
TERPNET 2023
Int'l Joint Research
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