2022 Fiscal Year Research-status Report
植物の乾燥ストレス応答におけるゲノムワイドな転写開始点制御の機能解析
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22K19170
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梅澤 泰史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70342756)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 乾燥ストレス / 転写開始点 / アブシシン酸 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
生物が環境の変化に応答するとき、一般的にはゲノムワイドな遺伝子発現の変化を伴う。これによって、細胞内のタンパク質の構成比が変化し、様々な応答機構を誘導することができる。一方、遺伝子の転写開始点が変化すると、プロモーターの調節領域が変化したり、翻訳産物のアミノ酸配列に影響を与えるので、一つの遺伝子領域から機能の異なる複数のタンパク質を作り出すことができる。そこで、申請者らは植物の乾燥ストレス応答における転写開始点制御の研究に着手した。Hi-Seq3000シーケンサー(illumina社)を用いて、転写開始点を網羅するTSS-seq解析を行ったところ、シロイヌナズナにおいて乾燥ストレスの際に転写開始点が大規模に変化することを突き止めた。したがって、転写開始点制御が植物の乾燥ストレス応答の一環として機能している可能性がある。 今年度は、転写開始点のデータをさらに蓄積するとともに、転写開始点制御を受ける遺伝子の機能解析を進めた。まず転写開始点制御を確認するために、5'-RACE法を用いて合計9種類の遺伝子について確認した。さらに、それらの遺伝子の機能を調べるために、遺伝子破壊株を確立した。現在、これらの遺伝子破壊株の表現型を解析しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、植物の乾燥ストレス応答において転写開始点がどのような役割を持つのか明らかにすることが目的である。これまでに、転写開始点データを大規模に取得するためにTSS-seq解析を行い、多数の転写開始点を予想することに成功している。さらに、転写開始点に変化が見られた遺伝子について、遺伝子破壊株を取得して解析を進めているが、こちらについてはまだ解析途中にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにTSS-seqデータの解析を進めて新しい転写開始点変化を検出していくとともに、遺伝子破壊株の単離を進めて表現型を解析し、植物の乾燥ストレス応答における転写開始点変化の生理学的意義を明らかにしてく必要がある。現在、有望な遺伝子をいくつか見つけているので、それらについては転写開始点ごとに異なるcDNAをクローニングし、植物に導入してその違いを精査する。また、転写開始点変化と細胞内局在やタンパク質の安定性の観点に関しても解析を進める必要があると考えている。
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Research Products
(13 results)