2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a parental CRISPR system for insect gene editing
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22K19179
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大門 高明 京都大学, 農学研究科, 教授 (70451846)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 昆虫 / CRISPR / 節足動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、成虫への注射によって昆虫のゲノム編集を可能とするparental CRISPR法の学理を構築し、この方法のさらなる効率の向上、多用途化、適用可能範囲の拡大を実現させることを目的とする。 2022年度は、以下の研究項目を実施した。 (1) 「難インジェクション昆虫」における実証試験:従来法(=卵への注射)ではゲノム編集が著しく困難であった種において、DIPA-CRISPR法によるゲノム編集実証試験を行った。寄生蜂の1種ではゲノム編集個体を得ることができなかったが、カメムシ目の1種においては数%の効率でゲノム編集個体を得ることができた。 (2) 適用可能範囲(種)の調査:これまでの研究において、多栄養室型の卵巣をもつ昆虫(ハエなど)ではDIPA-CRISPRがうまく働かなかった。そこで蚊についてもテストしたところ、数%の効率でゲノム編集個体を得ることができた。これによって、昆虫の卵巣の3タイプのすべて(無栄養室、端栄養室、多栄養室)において、DIPA-CRISPRが可能であることが判明した。ハエでうまくいかない理由は不明である。 (3) best practice構築:産卵様式ごとの最適な注射タイミングについて検討した。少量の卵を毎日産み続けるタイプの複数種において、造卵を開始して間もない新成虫に注射すると効率が跳ね上がるという特徴が共通してみられ、このタイプにおいては効率を50%以上に向上させることができるようになった。 (4)より高度なゲノム編集法の開発:遺伝子ノックインについて、供与するドナーDNA(ssODNなど)の配列長等について検討した。コクヌストモドキにおいて、遺伝子ノックイン個体は安定して得ることができているものの、効率の顕著な向上は見られず、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
parental CRISPRのプロトタイプであるDIPA-CRISPR法について、原著論文として公表することができた。加えて、当初計画にあった研究項目のそれぞれについて、順調に研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、以下の研究項目を実施する計画である。 (1) 適用可能範囲(種)の調査:昆虫以外の節足動物(甲殻類・鋏角類・多足類)への展開を見据え、祖先的な昆虫である無変態昆虫マダラシミにおいてDIPA-CRISPR法を行う。あわせて、水生の甲殻類(小型のエビ)についても調査を行う。 (2) より高度なゲノム編集法の開発:遺伝子ノックインについて、供与するドナーDNAについてさらに複数のタイプを試し、そのノックイン効率を明らかにする。 (3) Cas9タンパク質のエンジニアリング: 2022年度にはCas9タンパク質の精製法(DIPA-CRISPRを可能とするレベルの純度)を樹立したため、Cas9タンパク質のエンジニアリングに着手する。卵移行リガンドとして機能すると考えれれるの候補ペプチドをCas9に融合させ、そのタグ融合Cas9を用いることでDIPA-CRISPRのパフォーマンス(ゲノム編集効率、好適な注射タイミングの拡大、対象種の拡大、など)が向上するか調査する。
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Causes of Carryover |
本年度に必要となった物品費の多くを自己資金(大学運営費、寄付金等)で賄うことができたため。翌年度には本課題の予算を用いて研究を実施する。
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