2022 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス抵抗性研究の高度化に資するゲノム編集タバコプラットフォーム確立への挑戦
Project/Area Number |
22K19186
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹田 篤史 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60560779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩川 弘宙 立教大学, 理学部, 准教授 (60710415)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ウイルス抵抗性 / RNAサイレンシング / Nicotiana benthamiana / アグロインフィルトレーション / RNAサイレンシングサプレッサー / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウイルス抵抗性研究の高度化に資するゲノム編集Nicotiana benthamiana(以下ベンサミアーナタバコとする)のプラットフォームを確立することである。令和4年度には、主にDCL遺伝子のゲノム編集に関連して以下の実験を行った。 RNAサイレンシング関連遺伝子のゲノム編集について:ベンサミアーナタバコにおいて、TGS経路に関与する遺伝子と、PTGS経路に関与する遺伝子のゲノム編集を試みた。TGS経路に関与するDCL3遺伝子のゲノム編集と、PTGS経路に関与するDCL2/DCL4a/DCL4b遺伝子のゲノム編集を行い、Cas9外来遺伝子を含まないヌル分離株の単離に成功した。また、TGS経路に関与するRDR2, AGO4, AGO6と、PTGS経路に関与するRDR6, SGS3, SDE5の各遺伝子のゲノム編集を開始した。 RNAサイレンシング関連遺伝子の機能解析について:作出したdcl変異体の形態を観察した結果、PTGS経路が欠損したと考えられるdcl2/4a/4b三重変異体で植物体の生育遅延と軽度の矮小化、そしてめしべの短小化による稔性の低下が確認された。他方、TGS経路が欠損したと考えられるdcl3変異体では、生育に関連する表現型は認められなかった。dcl3変異体およびdcl2/4a/4b三重変異体でIR-PTGSを誘導し、siRNAのノーザン解析をした結果、dcl3変異体では24 ntのsiRNAのシグナルが完全に消失しており、dcl2/4a/4b三重変異体では21, 22 ntのsiRNAのシグナルが完全に消失していることが示された。これらの結果から、本研究で作出されたdcl3変異体およびdcl2/4a/4b三重変異体では、標的とした遺伝子の機能が完全に欠損していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム編集植物の作出が順調に進んでおり、TGS経路が欠損していると考えられるdcl3変異体の単離とPTGS経路が欠損していると考えられるdcl2/4a/4b三重変異体の単離に成功したため、「(2)おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の進捗状況を踏まえて、令和5年度には、以下の実験を行う計画である。 RNAサイレンシング関連遺伝子のゲノム編集について:引き続き、TGS経路に関与するRDR2, AGO4, AGO6と、PTGS経路に関与するRDR6, SGS3, SDE5の各遺伝子のゲノム編集を進める。また、dcl3変異体とdcl2/4a/4b三重変異体を交配して世代をまわすことで、siRNA生合成に関与するdcl遺伝子の一重変異体から四重変異体をすべて単離することを試みる予定である。 RNAサイレンシング関連遺伝子の機能解析について:単離したdcl変異体でsmall RNAの次世代シークエンス解析を行う。まずは芽生えを用いて解析を行う予定である。また、DCL2, DCL3, DCL4遺伝子のクローニングを行い、一過的な相補実験系の確立を試みる。 アグロインフィルトレーションによって誘導される一過的なRNAサイレンシングの遺伝学的解析について:TGS経路が欠損したと考えられるdcl3変異体とPTGS経路が欠損したと考えられるdcl2/4a/4b三重変異体でアグロインンフィルトレーションを行い、一過的に誘導されるRNAサイレンシングにおけるTGSとPTGSの役割を遺伝学的に解析する。また、TGS経路が欠損した植物とPTGS経路が欠損した植物で異種タンパク質の発現量を評価する。 VSRの機能解析およびde novo TGSの経時的解析について:これらの解析を行う目的で、作出したdcl変異体をGFP発現16c植物およびホタルルシフェラーゼ(FLuc)発現B13植物と交配する。交配後に自家受粉させた後で、GFP/FLucのホモ固定とdcl変異の選抜を行う計画である。
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