2023 Fiscal Year Research-status Report
Plant protection exploiting the interaction with insectivorous bats
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22K19190
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中野 亮 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (90546772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 元彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部 道南農業試験場, 主査 (60462363)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 超音波 / 捕食者 / 逃避行動 / アワノメイガ / アブラコウモリ / シロオビノメイガ |
Outline of Annual Research Achievements |
1) チョウ目害虫の防除に有効な超音波 前年度において、飛翔するアワノメイガは、アブラコウモリに追い付かれる直前に急激な逃避行動(急降下または突然の螺旋飛翔)により捕食を回避することが分かった。そこで、パルスの長さ(PD)が10~0.2ms、パルス間の間隔(IPI)がそれぞれ77.6~6.0msの計8パターンの超音波パルスを羽ばたくアワノメイガに100dB peSPL音圧で提示した。アワノメイガの腹部背面の表皮を微小ICクリップで固定し、このクリップの虫側と反対の末端をフォースセンサに接続することで、羽ばたきによって生じる圧力変化のタイミングを測定した。その結果、アブラコウモリが蛾類に接近する際に発する超音波パルス(PD1.0ms/IPI8.6msおよびPD0.6ms/IPI7.0ms)に対する行動潜時が有意に他よりも短く、感受性が高いことを明らかにした。次に、既交尾メス成虫と寄主植物のスイートコーン苗を用いた風洞試験を実施した。対照としてバックグラウンドノイズを提示した場合と比べ、PD0.6ms/IPI7.0msの超音波パルス、あるいは当該パルスを0.2msの長さ・間隔で細分化した音圧100dB peSPLの超音波を提示すると、寄主植物への誘引率はそれぞれ86%と95%減少した。
2) 野外効果試験 前記に示した新規超音波パルスの知見を得る前に実施したため、誘引率がコントロール比で-40%となることが前年度までに分かっていた時間構造(PD6ms/IPI94msの超音波パルスを0.2msの長さ・間隔で細分化したもの)を試用した。この超音波パルスの有効範囲内における、野外に定植したスイートコーン100株の上位葉、雄穂、茎へのアワノメイガによる被害は、無処理区より32~52%低く、収穫物すなわち雌穂への被害率は、無処理区より2~35%低い結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、部分的には研究実施計画に記載した以上の研究成果を得ることができた。しかしながら、もう一つの研究対象種であるシロオビノメイガについては飼育に難があり、実験に供試することができなかった。行動試験を経て、アワノメイガの防除に有望と推測された、持続時間の短い(PD0.6ms)パルスをマイクロパルス化した超音波パルスの超音波発生装置への実装に着手済みであり、野外に植えたスイートコーンおよびホウレンソウに対するアワノメイガおよびシロオビノメイガの同時防除試験の準備も予定通りに終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アワノメイガの既交尾メス成虫の寄主植物への誘引を高い割合で抑制するマイクロ超音波パルスを新たに用いて、スイートコーン圃場におけるアワノメイガ、およびホウレンソウ圃場におけるシロオビノメイガの防除試験を研究分担者の所属機関で5月以降より順次開始する。当初の研究計画よりも後ろ倒しにはなるものの、シロオビノメイガを用いた室内行動試験を実施し、アワノメイガ防除に有効であったマイクロ超音波パルスがシロオビノメイガにも有効であることを裏付ける実証データを圃場試験と並行して取得する計画である。
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Causes of Carryover |
当初は、野外のアブラコウモリがアワノメイガ等を捕食するか否かを明らかにするため、アブラコウモリの糞を採取して次世代シークエンスによる食性分析を予定していた。しかしながら、アブラコウモリへのアワノメイガ類を実際に放飼する試験を実施することで、実際にアブラコウモリがこれら蛾類を捕食しうることが判明した。そのため、次世代シークエンスによる食性分析をする必要性がなくなったため、その分の経費が削減することができ、次年度使用額が発生した。 2024年度は、スイートコーン等の圃場における野外効果試験を実施する予定であり、2023年度の室内行動試験で新たに特定した、アワノメイガ類の防除に有望な超音波パルスを発生させる装置の制御用マイコンを試作する費用に上記の経費を拠出する計画である。
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