2022 Fiscal Year Research-status Report
親魚の片側卵巣摘出による大型種苗の創出:ワムシを使わずにアユ種苗が作れるか?
Project/Area Number |
22K19204
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70281003)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ヒメマス / 卵巣 / 卵 / 種苗 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵から孵化した仔魚は卵黄中の栄養分を利用して発生・成長し、卵黄の吸収が完了する前後から摂餌を開始する。この餌付け期の飼育は種苗生産の中でも最も難しいステップであり、飼育者の技術と経験に加え、多大なる労力と時間を要する。ギンザケの一対の卵巣のうち片側を外科的に切除すると、余った卵黄成分が残された卵母細胞に過剰に蓄積し、その大きさが約1.5倍にまで成長することが報告された。そこで、本研究では、片側卵巣摘出後に得られる大型卵を種苗生産に用いることで、餌付け期の種苗を大型化し、種苗の初期生残の改善が可能かを検証することを目指した。まず、ニジマスをモデルに用いて、外科手術により片側卵巣の摘出手技の検証を行った。腹部正中線を3センチほど雌で切開後、卵巣を摘出し、イソジン消毒後に手術用縫合糸で3ステッチ程縫合することで高い術後の生残率を得ることが可能であった。今年度は排卵の三カ月前の6月に一回産卵型サケ科魚類の一種であるヒメマス2+魚から卵巣を摘出した。この段階で卵巣は平均卵径3.1mmとかなり卵黄蓄積が進行していることが確認された。これらの個体を排卵時まで飼育した結果、9月に7匹の個体から排卵卵を得ることに成功した。これらの卵は1粒あたりの重量が対照区では85.0mgであったのに対し、片側卵巣摘出区では90.3mgとやや大きい傾向が認められたものの、その有意差は認められなかった。しかし片側卵巣摘出を行った雌親魚のうちに個体では平均卵重が100mg以上に達しており、本操作により卵の大型化を再現可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
卵巣摘出手術も順調に進めることができたうえ、有意差はなかったものの一回繁殖型のサケ科魚類であるヒメマスの片側卵巣摘出で得られた卵の大きさがやや大型化する傾向が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実験で得られた卵は実験区間で平均重量の差こそ有意な違いは見られなかったが、最大では1粒卵中が111gとかなり大型の卵を生産する個体も得られた。今年度は卵巣摘出の時期を至適化することでより大型の卵を安定して獲得する手法の構築を目指したい。また有意に大型の卵が得られた場合には、授精実験を行うことでヒメマス種苗の生産を行い、これらの種苗の体サイズ、口径を定量するとともに、種苗の初期生残、大型配合飼料の摂餌の可否を検証していきたい。
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Causes of Carryover |
実験に使用予定であったヒメマスが感染症により大量斃死してしまい、充分量の実験魚の確保が困難となったため、片側卵巣摘出実験の技術開発はニジマスで代替し、実際の摘出手術は当初の予定より規模を縮小して行ったため、実験魚の飼育装置や餌代の支出を大幅に削減することとなった。
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