2023 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性無脊椎動物の体液共生を分子的に理解する:移植実験で迫る共生機能の発動機構
Project/Area Number |
22K19209
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 聡 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70435832)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、ヒトデやナマコといった様々な海洋性無脊椎動物の体腔液に細菌が普遍的・恒常的に生息し、それらが周辺海水や体表・消化管等に存在しない特異な分子系統学的特徴を有することを発見してきた。本研究は、ヒトデの体腔液に特異な微生物(特にピロリ菌に近縁なものをターゲットとする)が共生し、独自の生理機能を発揮する分子機構を実験生物学的に解明する。具体的には、マヒトデ共生系(天然)と人為的共生系(異宿主への菌移植)における3項目時系列解析、即ち①体液中の微生物叢、宿主と微生物の②発現遺伝子、③代謝物質を補完的に解析し目的を達成する。本研究は「動物の体液は排他的ディフェンスの場」という常識に挑戦するとともに、安全安心な水産資源の持続的利用に向けた対策の礎となるものである。 2023年度は、予定していた通り、様々な飼育条件下における体腔液特異微生物の発現遺伝子に関するデータ解析(トランスクリプトーム解析)を主に進めた。体腔液特異微生物として、ピロリ菌近縁種だけでなく、これまでに全ゲノム解析に成功している系統群をターゲットとし、できるだけ多くの個体・条件(温度や除菌操作および共生微生物の入替えの有無等が異なる)においてトランスクリプトーム解析を行うことで、それぞれの体腔液微生物の生理機能に迫ることができたと考えている。飼育実験における宿主の死亡率が低かったことから、現在も飼育を継続しており、当初想定していたより長期間の時系列試料を採取することにも成功しており、体液共生系の安定性を検討するうえで貴重な試料を得ることができたと考えている。なお、本年度の研究に関連する成果の一部は学会や国際誌等で報告した。
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