2022 Fiscal Year Research-status Report
食用担子菌マイタケと共存細菌との相互作用解明による新規栽培法の創生
Project/Area Number |
22K19215
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (90526526)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | マイタケ / 複合微生物系 / 微生物間相互作用 / 共存細菌 / 木材腐朽 / きのこ栽培 / 食用菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではマイタケ原木栽培において土中に埋設したマイタケ原木中で、マイタケ菌糸と土壌中の特定の微生物がある種の共生関係を築いているのではないかとの仮説のもと、その相互作用の解明を目的としている。本年度は、埋設されたマイタケ原木からの細菌株の分離を行い、寒天培地上でマイタケ菌糸と細菌を対峙培養することで細菌がマイタケ菌糸の成長に及ぼす影響を調査した。 マイタケの原木栽培を行っている農家より、土中に埋設され、マイタケが発生している原木を入手した。掘り起こした原木からは①原木に付着していたマイタケの菌塊、②マイタケ子実体の根本、③原木の表面、④原木表面に付着していた土、の4か所を採取し、そこから限界希釈法により細菌を分離した。分離時における培地はR2AおよびPDA培地とし、培養温度は25℃と30℃とした。結果、251株の細菌を分離した。これら分離細菌株とマイタケ菌糸をPDA培地上で対峙培養し、マイタケ菌糸の菌糸伸長に対する細菌の影響を評価した。評価方法は、菌糸接種点から細菌接種点の方向と、その逆方向の菌糸伸長速度を比較し、細菌接種方向への菌糸伸長速度が速いものを促進効果ありと判断した。その結果、25℃で分離された細菌株125株の内53株で促進効果が見られ、30℃で分離された細菌株126株の内、35株で促進効果が見られた。これまで全体として分離された細菌株の30%以上がマイタケの菌糸伸長促進効果を示したのは本研究の仮説を指示しており興味深い。このデータを元に、試験管内に詰めた木粉培地(菌床)で同様にマイタケ菌糸の伸長に及ぼす細菌の影響について評価をすすめているが、現在のところ有意な菌糸成長促進は得られていない。実験方法について再度検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた細菌の分離を完了できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
マイタケ原木より分離された細菌の中に比較的多くのマイタケ菌糸伸長促進効果を示すものが含まれることが示唆された。しかしながら、検体数が多く、一次的なスクリーニングとして行ったため、統計的に有意な促進効果としては定義できない。したがって、次年度は一次スクリーニングの結果を元に細菌株を絞り込み、繰り返し数を増やすことで統計的に有意なデータ取得を行う。また、優位に促進効果が得られた菌株については、rRNA遺伝子配列を解析することで種の推定を行う。これらの結果から細菌株をさらに絞り込み、木粉培地における共培養試験を進める。本年度はシイタケ栽培に用いられる広葉樹おが粉に栄養助剤として米ぬかを添加したものを用いたが、マイタケの菌糸伸長が十分に早く、細菌の添加効果が表れなかった。本研究で用いている細菌株は菌床栽培ではなく米ぬか等を含まない原木栽培であるため、栄養助剤を含まない木粉もしくは木材で検討すべきである。この評価方法は研究の前例がなく、木質基材中でマイタケ菌糸と細菌を共存させる実験法の開発を行う必要がある。まずは栄養助剤を含まない広葉樹木粉上でマイタケ菌糸と細菌を共培養するが、菌糸の成長を定量的に評価する手法としてエルゴステロール法もしくは菌糸の生育を定量的に計測する方法について検討する。これを確立することが優先事項であり、次年度研究の大きな課題である。
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Causes of Carryover |
マイタケ共存細菌の大量分離と一次スクリーニングは行えたが、細菌数が膨大なため統計的なデータ採取までは行えなかった。このため次年度にさらに多くの計測が必要となり、人件費を多く使用する必要が生じたため、当該助成金を翌年度分と合算して使用する必要が生じた。
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