2023 Fiscal Year Research-status Report
魚類の高密度飼育による成長阻害因子の同定および高密度耐性魚の作出
Project/Area Number |
22K19216
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
宮西 弘 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30726360)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 密度効果 / 密度認識 / 成長阻害 / メダカ / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類を含む生物は高密度飼育により成長が阻害されるため、適正な飼育密度の管理は重要である。昨年度、水質などの飼育条件を適正に維持しても、高密度下のメダカにおいて密度依存的な成長阻害を確認し、密度効果研究のモデルとなることを示した。また、低密度と高密度群間によるトランスクリプトーム解析およびスクリーニング解析から19の密度効果に関連が期待できる候補遺伝子を得た。本年度は、他魚類における知見を収集するため、水産有用魚種であるニジマスにおける密度効果に関する実験を行った。ニジマスにおいて、先行研究での適正とされている稚魚の飼育密度を基準に、低密度から高密度まで、段階的な密度飼育実験を行った。その結果、密度依存的な成長阻害がみられ、高密度ほど成長を阻害した。しかし、メダカとの密度とは大きく異なりニジマスは絶対的に高密度に強い魚種であることも再確認された。成長率をみると、高密度の成長阻害は実験開始1週目には生じていた。 メダカがどのように、正確に周囲の個体群密度を認識しているかに迫るため、感覚に着目し研究を実施した。密度認識に関わる感覚として、視覚・側線感覚・嗅覚が様々な魚種でも注目されている。本研究では、メダカが、わずか2匹という密度の違いも認識していることが昨年度までの結果から考えられたことから、視覚に着目した。視覚が密度認識に関わるかを調べるため、39尾/3L入れた水槽の中に6尾/2Lの小さい水槽をいれ二重の水槽を用いた疑似高密度群と、小さい水槽内のみにメダカ(6尾/2L)が入っている対照群の成長を比較した。 その結果、周囲に魚を高密度で視覚のみで認識させ疑似高密度を再現しただけであるにもかかわらず、疑似高密度群において成長阻害が確認できたことから、密度認識には視覚が重要であることを初めて示した。これまでの研究の一部をZoological Science誌に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり昨年度の結果を踏まえて解析を進められた。これまで知見が皆無であった密度認識という観点の中で、魚類で初めて視覚が密度に認識に重要であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
ニジマスにおける高密度群と低密度群間でのトランスクリプトーム解析を実施したため、その解析を進める予定である。また、メダカにおけるトランスクリプトーム解析から得られた、19遺伝子について詳細な解析を引き続き継続する。一連の解析から、有力と考えられた遺伝子について、ゲノム編集を行い機能欠失系統の確立を行う。
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Causes of Carryover |
論文掲載の予定が翌年度となったため、それに関わる予算を次年度使用額とした。翌年度内に使用する。
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