2023 Fiscal Year Annual Research Report
人工冬眠誘発の基盤となる哺乳動物に普遍的な低温耐性機構の解明
Project/Area Number |
22K19243
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
志水 泰武 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (40243802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 有希 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 助教 (20888531)
宮脇 慎吾 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70756759)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 冬眠 / 低体温 / 低温ショックタンパク質 / 転写後調節 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に、ゲノム編集マウスの作成に着手し、イントロンをインフレームで欠損して冬眠パターンのみを発現するマウス(冬眠型)と、スプライシング配列(GT-AG)を欠損して冬眠パターンを発現できないマウス(バリアント型)の2種類のゲノム編集マウスが作出できた。バリアント型では精子形成に障害が出ることを想定したが、生殖能力に問題はなかった。両系統ともに大きな障害を示すことなく成長することが確認できたため、本年度はこのマウスを使って、CIRPのスプライシングレベルの調節が低温耐性の基盤となることを証明する実験を行った。 野生型のマウスをペントバルビタール麻酔後に4℃の環境下で冷却する方法で強制的に低体温に誘導した場合、体温が20℃を下回ると激しい不整脈が出現し、心停止が起こった。冬眠型のマウスが、このような不整脈を回避できるか検討したが、野生型と同様の結果であり心停止を回避するには至らなかった。一方、野生型のマウスでも15℃の体温で心拍動を維持できる方法(イソフルラン吸入麻酔下で冷却し、体温が30℃付近になった状態で数時間維持した後に10℃以下にまで低下させる方法)の場合は、バリアント型で不整脈の発生頻度が高く心停止する個体が半数に上るのに対して、冬眠型では不整脈の発生が軽微であり心停止する個体はわずかであった。ランゲンドルフ装置を使った摘出心臓標本の実験系を立ち上げ、心臓自体の低温に対する耐性を検討した。その結果、15℃のバス内で拍動を維持できる時間が冬眠型のマウスから摘出した心臓の方が、バリアント型から摘出した心臓より、優位に長いことが見出された。不整脈の発生頻度も冬眠型の心臓の方が少ないことから、CIRPが冬眠型であることが心臓の低温耐性に有効であることが示された。
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