2022 Fiscal Year Research-status Report
T=3正二十面体ウイルス粒子構造を模した分子構築法の開発と感染症ワクチンへの応用
Project/Area Number |
22K19253
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新川 武 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50305190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉城 志博 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (00720822)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | T=3 正二十面体ウイルス / ノンエンベロープウイルス / 神経壊死性ウイルス / 分子足場(molecular scaffold) / Shell domain |
Outline of Annual Research Achievements |
本事業は、本来粒子形成しないワクチン抗原タンパク質を人工的に粒子形成させ、免疫原性を向上させることで、そのワクチン機能を高めることを狙った研究課題である。特に3量体は形成するが、粒子形成しないタンパク質抗原を「T=3 正二十面体ウイルス」の骨格を活用することで粒子化することを狙っている。 より具体的には、ベータノダウイルスのうち、ハタ科魚類に神経壊死症状を引き起こす神経壊死性ウイルス(Nervous necrosis virus: NNV)の Shell (S) domainを活用し、このS domainのC末端に外来抗原を融合させることで粒子形成させる。NNV本来の構造は、SとProtrusion (P) domainが融合した構造がまず3量体を形成し、さらにその3量体が60量体化することで粒子を形成する。本研究では、このP domainを他の抗原タンパク質と置き換えることで人工的な粒子を形成させることを狙っている。 これまで主に大腸菌発現系を用いてNNV S domainやS-CMP(※CMP: 3量体形成コイルドコイルタンパク質)を発現させてきた。大腸菌ではS domainを単独で発現させることが困難であったが、S-CMPの場合、粒子形成が認められた。ただし、天然のNNVと比べると粒子径の短い粒子しか形成できなかった。そこで、発現系を大腸菌から酵母へ変更したところ、S-CMP だけでなく、S domain単独でも天然NNVとほぼ同じ粒子径を有する粒子の形成に成功した。したがって、今後、発現系については、積極的に大腸菌から酵母へ変更することで本事業を遂行することが望ましいと判断した。なお、大腸菌と酵母はその扱い方の容易さからすると、確かに大腸菌の方が優位性は高いが、他の発現系(例えば昆虫細胞等)と比較すると酵母も圧倒的に有利である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌発現系では、粒子形成しなかったNNV S domainが酵母発現系では粒子形成が確認され、今後の本事業の進展にとって重要な知見が得られた。すなわち、最も理想的な発現系である大腸菌での成果は得られなかったものの、予想していなかったS domain粒子の形成が酵母発現系において確認されたため、今後の本事業の進展に大きく貢献できる知見が得られたと判断し、自己点検評価として、「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで主に大腸菌発現系を用いてNNV S domainやS-CMPを発現させてきたが、大腸菌ではS domainを単独で発現させることが難しく、一方、S-CMPの場合、粒子形成は認められたが、天然のNNVと比較し、粒子径の短い粒子しか形成できないことが分かった。そこで、発現系を大腸菌から酵母へ変更したところ、S-CMP だけでなく、S domain単独でも天然NNVとほぼ同じ粒子径を有する粒子の形成に成功したので、今後、発現系については、積極的に大腸菌から酵母へ変更することにした。 今後、この酵母発現系において、NNV P domainを他のワクチン候補抗原と置き換え、「S-antigen*」融合タンパク質の粒子形成の有無、そして、粒子形成するものについては、その生化学的解析、ならびに、免疫学的解析を進め、最終的にはそのワクチン機能を評価する実験を実施する予定である。(antigen*:他のワクチン候補抗原で、例えば、アデノウイルスファイバーノブタンパク質やレオウイルスファイバー受容体結合ドメインなどのこと。)
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Causes of Carryover |
計画当初より効率的に実験を推進することができたため、消耗品類購入額や解析委託額が予定していた額より少なくても実施することができた。令和5年度は本年度に生じた繰越金を利用して、当初計画より多くのモデル抗原を搭載したScaffold粒子のコンストラクトを構築することを予定している。
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