2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation and utilization of the digestive ability of Green turtles
Project/Area Number |
22K19258
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
牛田 一成 中部大学, 応用生物学部, 教授 (50183017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土田 さやか 中部大学, 応用生物学部, 講師 (40734687)
佐藤 克文 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (50300695)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | アオウミガメ / 海藻消化 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
岩手県大槌町の混獲による死亡個体5頭(うち4頭は一旦凍結)、沖縄県竹富町黒島の混獲死亡個体3頭の剖検時に腸管内容物を嫌気ポーターおよびBHIあるいはmGAM液体培地中に採取し中部大学に冷蔵状態で搬送した。加えて沖縄県美ら海水族館にて保護中の野生アオウミガメ3頭から新鮮糞便を嫌気ポーターに採取し、同様に冷蔵状態で中部大学に輸送した。嫌気ポーター内の試料を希釈した後、EG血液寒天平板、BL血液寒天平板、GAM寒天平板、MRS寒天平板に塗抹し、30℃の嫌気状態で培養した。発育したコロニーを単離し、16S rRNA遺伝子のPCR増幅とシーケンスによって同定を行った。分離されたアオウミガメ腸内細菌のうち合計で193株を同定したが、そのうち88株はVibrio属、Photobacterium属、Lactiplantibacillus属、Lactococcus属などの酸素耐性をもつ通性嫌気性細菌で、残り105株はCLostridium属、Bacteroides属、Eubacterium属、など絶対嫌気性菌であった。このうち16S rRNAシーケンスの一致度が90%前後のものが7株含まれており、これらは未知の細菌種である可能性が高いと思われる。哺乳類では腸内で多様な多糖の分解に働くとされるBacterides fragilis B.cellulosilyticus Clostridium butyricum, Oscillibacter ruminantium, Eubacterium limosumなどが大槌町10月捕獲個体および沖縄美ら海水族館保護個体から分離されたほか、193株以外に同定作業が完了していないもののうちに強い寒天分解性を示す細菌も複数株得られている。これらの細菌は、アオウミガメの消化に貢献していると想定されるため、今後詳細検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初の7検体から嫌気性細菌の分離が不調であったため採取部位を再検討するほか、保護個体からの新鮮糞採取もまじえたことで多くの絶対嫌気性細菌を分離することができた。 また、内容物の輸送培地の解析で、「胃内容物」では乳酸発酵がすすむものの「大腸内容物」ではギ酸、酢酸生成が優勢に起こり、酪酸や吉草酸の生成が起こっていないこと、水素精製は検出されるがメタン生成は起こっていないなど新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度同様に、野生アオウミガメから腸内細菌の分離と同定を進めるほか、海藻多糖の分解に貢献する細菌種の同定と機能解析を始める。生体で保護される場合は、新鮮糞便の採取ができる可能性があるため、できるかぎり神聖な試料の採取に努める。
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Causes of Carryover |
物品費および分析外注費の使用が進まなかった。2022年度前中半までに実施した採材では、凍結個体解凍後の剖検による腸内容物をもとにしており、恐らくそれを理由として芽胞性のCLostridiumを除いて嫌気性菌の分離が進まず、海藻多糖の嫌気分解に寄与することがほとんどないと考えられる好気性菌が多く分離されたため、分離細菌の生理性状やゲノム情報取得など高次の解析に進めるものがなかった。2022年度終盤になって嫌気性菌の分離が進んだことから、2023年度はこれらの細菌に加えて2023年度終盤にかけて成功例の多かった採材方法を用いてより多くの海藻多糖発酵細菌の分離と機能解析を目指す予定である。
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