2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウムイオンの細胞内動態変化を感知できる新規バイオセンサープローブの開発
Project/Area Number |
22K19274
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南野 徹 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (20402993)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 細菌 / 蛋白質 / 遺伝学 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜電位が過分極状態になることやナトリウムイオンの添加により、非運動性細胞群の中から運動性細菌が突如出現することから、膜を横切るイオンの流れの変化に伴う膜電位の揺らぎこそが不均一な細胞集団を出現させる重要なシグナルである可能性が示唆された。この仮説を検証するには、細胞内ナトリウムイオン濃度の動態変化と運動細胞出現の因果関係を明らかにする必要がある。本研究は、細胞内ナトリウムイオン濃度の動態変化を計測できる新規ナトリウムイオンセンサープローブを開発することを目的とする。本年度の主な成果は以下に示す。 前年度までに、枯草菌由来のMotSのPGBドメイン内に位置する68番目のグルタミンから117番目のグルタミン酸の領域にナトリウムイオン結合サイトが存在することが明らかとなった。この領域を含む様々な長さのフラグメントを設計し、それらのN末端およびC末端にドナー蛍光分子である青色蛍光蛋白質やアクセプター蛍光分子である黄色蛍光蛋白質を連結した分子内FRET蛍光蛋白質プローブを作製した。ナトリウムイオンに対するFRETは、作製した8つの蛍光蛋白質プローブのいずれでも観察されなかった。そこで、この領域がナトリウムセンサーとして機能するのか否かを再検討するため、サルモネラ菌由来のMotBのPGBドメインをMotSのPGBドメインと置き換えたMotAB-Scキメラ複合体を作製した。このキメラ複合体をサルモネラ菌体内で発現させると、サルモネラ菌はナトリウムイオンが培地中に存在する時にのみ条件致死の表現型を示した。この結果は、MotAB-Scキメラ複合体のプロトンチャネルがナトリウムイオンによって活性化され、その結果、大量のプロトンがサルモネラ菌体内に流れ込み、細胞の増殖が阻害されることを示唆している。以上の結果から、MotSのPGBドメインはナトリウムイオンセンサーとして働くと結論づけた。
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