2022 Fiscal Year Research-status Report
Visualization of protonated states of dissociative substituents by cooperation of quantum calculations and crystal structures
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22K19278
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
藤橋 雅宏 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (10397581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 秀行 大阪医科薬科大学, 医学部, 名誉教授 (00183913)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 結晶構造 / 量子計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、量子計算と結晶構造の協調による解離性置換基のプロトン化状態可視化手法の開発を目指している。この手法開発のための題材酵素として Methanothermobacter thermoautotrophicus 由来オロチジン一リン酸脱炭酸酵素 (Mt-ODCase) を用いている。予備研究により、Mt-ODCase の大量発現・精製・結晶化の手法は一通り構築済みである。X 線の吸収線量と結晶損傷の関係の調査も進んでおり、吸収線量 1 MGy までは結晶構造中で最も放射線感受性の高い部分でもほぼ変化しないとわかっている。この吸収線量は標準的なデータ収集の 1/10程度に過ぎないが、これまでにこの吸収線量で 0.99 Å分解能のデータ取得に成功している。このデータを基にした、汎用ソフトウェアでは扱えない esd(原子それぞれの座標の不確かさ)の見積もりを含む結晶構造も、パイロットデータについてはプログラム SHELEX を用いて決定済みである。 本研究では広く適用可能な手法開発を目指しているため、これまでに取得したデータの他に、複数のデータを取得しておくことが好ましい。そこで2022年度には、従来より構築済みであった手法により、Mt-ODCase の大量発現・精製・結晶化をおこなった。このうち結晶化について、シーディング手法の改善により、得られる結晶の質を制御できる可能性を見いだした。またこれまでに取得した Mt-ODCase のデータを整理し、今後の解析に使用可能なデータの特定を進めた。また、我々とは別に、近年ドイツのグループにより、ヒト由来ODCase (Hs-ODCase) について、様々な基質等の複合体の結晶構造が 0.9 ~ 1.2 Å 分解能で発表されていたが、この構造について量子計算を行うための下準備となる構造の精査も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第二年度以降のデータ収集に用いるための結晶の作成が、予定より遅れている。これまでの研究により、Mt-ODCase の大量発現・精製・結晶化の手法は一通り構築済みであったが、質の良い結晶の再現性が下がってしまったことが原因である。これについては、シーディング手法の改善により,得られる結晶の質を制御できる可能性を見いだしたので、今後は遅れを取り戻せると考えている。 また、量子計算の準備も予定よりやや遅れている。これは他グループによる結晶構造など、Mt-ODCaseとは別系統のデータを扱うことにしたためである。こちらは順に整理して、解析に持ち込みたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度にはMt-ODCaseの結晶作成手法の検証と結晶構造をもとにした量子計算を進める。結晶作成手法については、前年度の実験から、シーディング手法の改善により結晶の質を制御できる可能性を見いだしたが、この可能性について更なる検討を続け、必要なときに必要な結晶を供給できる体制の構築を目指す。藤橋が行う。 結晶構造をもとにした量子計算は,ソフトウェアNWChemを用いて林が進める。結晶構造による実験座標を基に、解析対象の置換基それぞれのプロトン化状態を様々に仮定したモデルを構築する。このモデルを初期状態として、置換基周辺をQM領域としたQM/MM計算を行う。計算結果と実験構造の原子間距離を比較し、これらが esd (原子それぞれの座標の不確かさ) の範囲で一致した計算で仮定したプロトン化状態を、真のプロトン化状態と考える。この方法により、プロトン化状態の可視化が可能であるかを、実際に確かめたい。
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Causes of Carryover |
研究初年度に実施した試料準備は、以前より所持していた消耗品類を活用して行ったため、今年度の使用額を圧縮できた。圧縮できた予算は、第二年度以降の実験試料準備や、計算高速化のための投資に適用したい。
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Research Products
(1 results)