2022 Fiscal Year Research-status Report
eIF3aのポリアンフォライト天然変性領域による神経活動依存的翻訳制御の解析
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22K19281
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
椎名 伸之 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 准教授 (30332175)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | RNA顆粒 / 天然変性領域 / IDR / eIF3a / 極性アミノ酸 / 神経活動 / ダイナミクス / 局所的翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物翻訳開始因子eIF3aは、生物の複雑化に伴ってC末端に長い天然変性領域(IDR)を持つようになった。脊椎動物では、酵母と比較して、このIDRが約400アミノ酸も伸長し(vertebrate IDR, vIDR)、その約6割が極性アミノ酸で構成されている。vIDRの前半部分は、10アミノ酸が20回程度繰り返したリピート配列であり、後半部分は似たアミノ酸組成を持つが、配列はランダムである。 eIF3aは、マウスの神経細胞において、局所的翻訳を担うRNA顆粒に局在する。vIDRの存在により、神経活動に応じてダイナミクスを切り替えることができる。すなわち、神経の静止状態では流動性が低く保たれており、活動状態では流動性が上昇し、この制御が神経活動依存的な局所的翻訳の活性化に関係していると考えられる。 今年度は、vIDRの部分欠失変異体を作成し、神経RNA顆粒における流動性への影響を光褪色後蛍光回復法(FRAP)を用いて解析した。vIDRのリピート領域のみまたはランダム領域のみを欠損した場合、どちらも神経静止状態での流動性が高くなり、その流動性は活動状態でも変化しなかった。したがって、vIDRによる神経活動依存的な流動性制御には、リピート領域とランダム領域の両方が関与し、特に配列がリピートである必要はないことが示唆された。両領域が相加的に関与することを考えると、これらのアミノ酸組成で構成されるIDRが、400アミノ酸程度の長さを有することが、神経活動依存的な流動性制御を付与するために必要である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な目的の一つは、神経活動に伴うeIF3aの流動性変化を担うポリアンフォライト領域の分子デザインを解明することである。ポオリアンフォライト領域は、vIDRのリピート領域に相当するが、今年度の結果から、配列のリピート性よりも、むしろアミノ酸の組成とその長さの重要性が示唆された。この知見は、分子デザインの解明に一歩近づいたことを意味しており、本研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、神経活動に伴うeIF3aの流動性変化に及ぼすvIDRのリピート性と長さについて、さらに詳細な解析を進める予定である。具体的には、リピート領域のみを2つ、あるいは非リピート領域のみを2つ持つようなeIF3a変異体を作製し、アミノ酸組成が似ていても配列によってeIF3aの流動性調節が変化するかどうかを調べる。さらに、vIDRの極性アミノ酸をアラニンなどに置換した場合の影響も調べる。これらの実験により、神経活動に伴うeIF3aの流動性変化を規定するアミノ酸組成や配列のデザインルールの解明を目指す。 また、RNA顆粒へのmRNA局在化や局所的翻訳に対する上記の変異体の影響も解析する予定である。生細胞内でmRNAの時空間的な局在化を可視化できるMS2法や、局所的翻訳の時空間な制御を可視化できるSunTag法を使用し、顆粒の流動性評価法と組み合わせて同時に蛍光ライブイメージングすることにより、eIF3a流動性-mRNAの取り込み-局所的翻訳の関連性を一顆粒レベルで計測する。以上により、eIF3aのvIDRによる神経活動に応じた流動性制御が局所的翻訳制御にどのような影響を与えるかを解明することを目指す。さらに、vIDR欠損マウスやリピート領域欠損マウスの作製を開始し、vIDRが生体内で果たす役割の解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は動物施設におけるマウスの繁殖を制限したため、次年度使用額が生じた。しかし、次年度には、vIDR欠損マウスやリピート領域欠損マウスの作製に取り組む予定であり、これに伴う費用が大幅に増える予定である。
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Research Products
(7 results)