2022 Fiscal Year Research-status Report
in-situビオチン化プロテオミクスによるタンパク質状態の定量化技術の開発
Project/Area Number |
22K19288
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松本 雅記 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60380531)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | プロテオミクス / タンパク質構造 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では細胞内のタンパク質状態の網羅的計測技術の開発を目的とする。ほとんどのタンパク質は細胞内で他のタンパク質と相互作用したり、リン酸化などによってその構造状態を変化させたりしていると考えられる。例えば哺乳類細胞の有糸分裂期の細胞は、細胞核膜は消失や微小菅などの細胞骨格の再構成など極めて劇的な形態変化が認められるが、このような状況下では、細胞全体にわたってタンパク質の状態変化が生じていると思われる。しかしながら、その実態を迅速かつ網羅的に見る手段は存在しない。そこで、膜透過性ビオチン化試薬を用いたin situ ビオチン化プロテオミクスを確立し、既存の相互作用プロテオミクスの手法を適用した結果と比較することで、各ビオチン化部位の変化の構造的な意義付けを行い、迅速に細胞内タンパク質状態をモニターする技術を確立を試みた。今年度は、網羅性とスループットを両立した定量プロテオミクス基盤を整備した。具体的には、data-independent acquisition (DIA)と呼ばれる手法やイオンモビリティーによる気相分離、さらにはチップ型トラップカラムを用いたハイスループットLCの組み合わせによる計測系を構築した。 NHS-ビオチン試薬は膜透過性であり、細胞内に取り込まれたタンパク質上のLys残基と共有結合を形成する。この反応性がタンパク質の状態(構造や他のタンパク質との相互作用状態)に依存すると仮定している。得られた標識細胞からタンパク質を抽出し、酵素消化後にビオチン化ペプチドを高純度に精製する系を確立した(in situ biotylation proteomics: ISBP)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は計画通りに高スループットかつ網羅性の高い質量分析技術を確立し、これを用いて多数のビオチン化ペプチドを同定・定量することが可能であった。これは、すでに十分な予備検討を行っていたため、研究開始後すぐに実験系のセットアップを完了でき、かつデータ解析のインフラも十分に整備していたことによる。一方、R4年度末から計画していたタンパク質の複合体分離実験が所有している超遠心機の故障により実施できなくなった。これに関しては、他の研究機関の設備を借りての実施を行うなど試みたが、試行回数が少なく十分な検証ができていない。また、タンパク質の同定に用いる装置が複数回にわたり重度の故障を起こしたため、当初予定していた測定を全て完了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、非変性条件下でのタンパク質分画法を実施し、複合体形成状態とタンパク質ビオチン化の関係性の解明を進める予定である。現在、研究室所有の超遠心機が故障のため廃棄処分となり、R5年度に計画していた当該実験が自研究室で実施できないが、機関内他部局や他の研究機関の設備を利用して当該実験を進める方策も立てており、これによって計画していた実験を進める予定である。また、biotin化だけでなく、他の化学修飾法も取り入れてより包括的なタンパク質構造変化の網羅的解析技術の確立も展開する予定である。また、本研究で使用している質量分析計の不具合も頻発しているため、他目的で用いている類似装置を一時的に活用するなどの方策を講じる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で当初予定していた会議をオンラインで実施することで旅費の支出がなかった。また、タンパク質分取装置の購入を検討していたが、目的に見合う機器の選定がデモ機の不足などで遅延し、購入ができなかった。また、試薬や消耗品等に関しては別目的で購入していた物品の残余を流用して実施したため購入が不要であった。次年度は上記機器の購入を実施するとともに、本年度購入した自動分注ロボットの機能拡張を予定している。
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Research Products
(8 results)