2022 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism of functional conversion from noncoding to coding RNAs
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22K19293
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣瀬 哲郎 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (30273220)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ノンコーディングRNA / mRNA / RNA顆粒 / 翻訳 / リピート配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
HSATIII RNAは、その発見以来20年以上タンパク質をコードしないlncRNAとして非膜オルガネラの核内ストレス体の構造骨格としての機能が知られており、実施者のグループでは、これまでに核内ストレス体におけるHSATIIIによって係留される様々なタンパク質郡の機能解析を通して、HSATIIIがlncRNAとしてストレス応答性RNAスプライシング制御を行なっていることを明らかにしてきた。ところが最近、このHSATIIIがストレス回復後期になると細胞質に移行して別の非膜オルガネラを形成することを発見した。さらに驚くべきことに、細胞質に移行したHSATIIIは翻訳されて奇妙なリピートペプチドを合成している可能性が明らかになった。そこで今年度は、1. HSATIIIが翻訳されていること、2. 合成されたリピートペプチドが細胞内のどこに存在しているか、3. どのような因子と相互作用しているか、といったHSATIIIの翻訳に関する基盤情報を習得した。1ではHSATIIIリピートペプチドに対する抗体を作成して、このペプチドがストレス回復後期に特異的に合成され、このタイミングでの翻訳阻害剤処理によって合成が損なわれること、HSATIIIのKDでは合成が損なわれること、そしてポリソーム画分にHSATIII RNAが検出されることといった結果を得た。2では細胞分画によって、多くのHSATIIIペプチドは核内に局在していること、細胞質にも存在していることを明らかにした。さらに人工的にデザインしHSATIIIペプチドを細胞内で合成したところ、主に核内に局在することを確認した。3ではHSATIIIペプチドの免疫沈降と質量分析によって、相互作用因子として多くのRNA結合タンパク質を同定した。これらの基盤情報をもとに、今後HSATIIIの翻訳の意義を解明するための足がかかりができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HSATIIIが確かに翻訳されていることを示す結果が複数取得でき、HSATIIIがlncRNAとmRNAの両方の機能を持つことがほぼ立証できた。さらに合成されたペプチドに関する様々な基盤情報が予想以上に取得でき、その機能に迫る足がかりができたことから計画以上の進展と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に取得したHSATIIIペプチドに関する基盤情報をもとに、このリピートペプチドのストレス回復期の役割を明らかにする。また細胞質でHSATIIIが形成する非膜オルガネラと翻訳との関係、さらにはHSATIII RNAの核から細胞質への移行機構などの解明も含めて、lncRNAからmRNAへの機能転換という極めてユニークな現象の分子機構の理解を目指す。
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Causes of Carryover |
HSATIIIペプチドの機能解析が予定していたよりも順調に進み、いくつかの実験で想定していた試薬や器具の購入費分が次年度に使用することになった。次年度予算と合わせて、HSATIIIペプチドの機能解析、HSATIIIの核から細胞質への移行機構、細胞質の非膜オルガネラと翻訳との関係の解析に必要な物品購入に使用する予定である。
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