2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K19299
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20580989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 文夫 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (10360653)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 反応拡散系 / 細胞サイズ空間 / 人工細胞 / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応と分子拡散の共役(反応拡散共役)によって出現するチューリングパターン(TPs)は、動物の縞模様のように細胞間相互作用で出現する現象を説明可能だが、最新研究において細胞内の分子配置にも重要である証拠が集まってきている。もし細胞の分子配置をTPsが決めていることが証明されれば、分子配置メカニズムにおける生命科学の視点は大きく転換する。そこで本研究では、人工細胞内再構成系と精製された要素を利用し、細胞サイズの空間でTPsが形成可能な条件を解明することを目的としている。 本研究に関連するものとして、バクテリアの細胞分裂面を決定するタンパク質の極間振動波であるMin波が存在するが、Min波とTPsの違いは、動的な変化を示すか、静的な構造であるかの違いである。そこで、Min波の動的な振る舞いは阻害因子(MinE)が活性化因子(MinD)と局在を共にすることに由来することに着目し、この両者が共存できない条件を創ることでMin波を静的にすることを試みた。具体的には、細胞骨格タンパク質であるFtsZをMinEと結合させ、MinEとMinDの局在を別にする条件を探索した。結果、反応速度と分子拡散の速度を調節することで、MinEとMinDが分離し、MinDが周期的なスポットパターンとして出現する条件を発見した。静的な周期パターンであり、ATPを利用した非平衡性を持ち、FRAP法のような局所刺激による外乱に対する自己修復機能の持つこと、融合によりスポット形状の再編成が生じることからTPsであると結論づけた。現在は理論研究者との共同研究を開し、このパターンが発生するメカニズムの解明とTPsであることの正確な論証を行うことを検討している。また、細胞内でのチューリングパターン形成法として本成果をまとめた論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
人工細胞内再構成系を利用することで、細胞サイズの空間で安定してチューリングパターン(TPs)が出現するための条件を明確にするために、(1)人工タンパク質によるMin波のTPs化と、(2)生命の初期胚内でTPs様のパターンを形成するPAR系の人工細胞内再構成、という2方向から研究を行う予定であった。(1)と(2)のいずれか、から細胞サイズ空間でのチューリングパターン形成原理が導かれれば、と考えていたところ、当初の計画以上に進展し、(1)はほぼ解決、(2)も要素の準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、(2)のPAR系の人工細胞内再構成を進める。また、(1)に関しては論文による報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は主に項目(1)における条件検討や項目(2)におけるPAR系の再構成に予算が投入される計画であった。しかし、項目(1)が予想以上に順調に進展したことにともない条件検討がほぼ不要であり、(2)は最初の検討のみにとどまったため、次年度使用額が生じた。その分は次年度に(2)で用いる合成、精製、パターン形成条件検討に利用する。
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Research Products
(4 results)